2007年12月31日月曜日

2007年 Favorite

■はじめて物(10)

藍色夏恋 (易智言)
世界 (賈樟柯)
不都合な真実 (Davis Guggenheim デイビス・グッゲンハイム)
珈琲時光 (侯孝賢)
バベル (アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)
緑茶 (張元)
それでも生きる子供たちへ 
トニー滝谷 (市川準)
長江哀歌 (賈樟柯)
ションヤンの酒家 (霍建起)


■リバイバル物(7)

青いパパイヤの香り (トラン・アン・ユン)
東京物語 (小津安二郎)
パリ、テキサス (Wim Wenders ヴィム・ヴェンダース)
悲情城市 (侯孝賢)
大人は判ってくれない (François Truffaut フランソワ・トリュフォー)
七人の侍 (黒澤明)
ピンポン (曽利文彦)

2007年12月30日日曜日

ピンポン


これは、もう前から大好き。久しぶりに見てもやっぱり好き。評価って変わるものだけど、これは変わらないから、ずっと好きだろう。

楽しんでできることとか、努力を努力と思わずにやれることが何よりの才能だって感じさせてくれる。これ見ると元気出る。


  • 2002年/日本/114分
  • 監督:曽利文彦
  • 原作:松本大洋、脚色:宮藤官九郎、歌:SUPERCAR
  • キャスト:窪塚洋介(星野裕(ペコ))、ARATA(月本誠(スマイル))、Sam Lee 李燦森 サム・リー (孔文革(チャイナ))、中村獅童(風間竜一(ドラゴン))、大倉孝二(佐久間学(アクマ))、竹中直人(小泉丈(バタフライジョー))、夏木マリ(田村(オババ))
  • 公式サイト http://www.pingpong-movie.com/
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv32428/


2007年12月15日土曜日

TAKI183

  • 2006年/日本/85分
  • 監督:小林正樹
  • キャスト:塚本高史、忍成修吾、加藤ローサ、窪塚俊介、村田充


いちばんきれいな水


  • 2006年/日本/90分
  • 監督:ウスイヒロシ
  • キャスト:加藤ローサ、菅野莉央、カヒミ・カリィ、南果歩
  • OFFICIAL WEBSITE http://www.cplaza.ne.jp/kireina-mizu/


シムソンズ

  • 2006年/日本/113分
  • 監督:佐藤祐市
  • キャスト:加藤ローサ(伊藤和子)、藤井美菜(尾中美希)、高橋真唯(小野菜摘)、星井七瀬(林田史江)、大泉洋(大宮平太)
  • 主題歌:JUDY AND MARY
  • 加藤ローサ OFFICIAL WEBSITE http://www.ken-on.co.jp/rosa/


2007年12月1日土曜日

暗くなるまで待って


見ようと思ったきっかけは、先週、「暗いところで待ち合わせ」を見たので、同じ設定の昔の名作もこの際ちゃんと見ておこうと思ったこと。

どちらも、主演が盲目の女性(ヘップバーンVS田中麗奈)、犯罪者が家に入り込み事件に巻き込まれ、だんだん主人公が事件を理解していって、最後で解決するって流れも同じですな。1本だけ見るより、比較でも面白かった。

  • 1967/アメリカ/108分
  • 監督:Terence Young テレンス・ヤング
  • キャスト:Audrey Hepburn オードリー・ヘップバーン (Suzy Hendrix)、Efrem Zimbalist Jr. エフレム・ジンバリスト・ジュニア (Sun Hendrx)、Alan Arkin アラン・アーキン (Lort)
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv2636/


2007年11月30日金曜日

ションヤンの酒家(みせ)


舞台は重慶市旧市街の吉慶街。そこで名物の鴨の首とうまい酒で居酒屋(屋台)を営む女主人。それを演じるタオ・ホンがかっこいい。彼女の台詞も演技も立ち居振る舞いも、全ての完成度が高くて、彼女を見るだけでも価値あった。もともとの地?

日本だったら、同レベルの演技ができるのは鈴木京香ぐらいか。夜の屋台街や暗い病院などの光・灯の使い方の演出も好み。

  • 2002年/中国/106分
  • 監督:霍建起(フォ・ジェンチィ)
  • 原作:池莉(チ・リ)
  • キャスト:陶紅(タオ・ホン)、陶澤如(タオ・ザール)
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv33771/


2007年11月25日日曜日

暗いところで待ち合わせ


(私の見た) 田中麗奈史上、一番の演技。まちがいなく代表作。

田中麗奈が演じるのは、大学在学中に失明後、家に閉じこもりがちになり、家族にも死なれ、ひとりで静かにすごしている女性。

チェン・ボーリンは、いじめにあって疎外感を感じている中国日本のハーフという役。片言の日本語を話しているところは違和感があるが、目力と存在感ある動きはさすが。中途半端な若手俳優を起用していたら、この映画の世界がぶち壊しになっただろうから、よしとする。

2時間を超える映画で、静かな映画にも関わらず、意外性のある展開と演出で、ぐいぐい引き込んで行く力があって、好感が持てた。

設定がほぼ一緒のオードリー・ヘップバーン主演の「暗くなるまで待って」を見直そう。

  • 2006年/日本/129分
  • 監督:天願大介、原作:乙一
  • スタッフ:Rena Tanaka 田中麗奈(Michiru Honma)、Wilson Chen チェン・ボーリン (Akihiro Oishi)、Koichi Sato 佐藤浩市(Toshio Matsunaga)、Haruka Igawa 井川遥(Harumi Mishima)、Mao Miyaji 宮地真緒(Kazue Futaba)、Ittoku Kishibe 岸部一徳(Michiru's father)
  • 田中麗奈オフィシャルサイト http://www.tanakarena.co.jp/
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv35980/


2007年11月24日土曜日

愛,断了線|スカイ・オブ・ラブ


不思議な無線機を通して、現代と20年前の時代の間で話をしてこころを通わせるふたりの物語。ふたりには超えられない運命があって、それを静かに受け入れるところがとにかく切ない。とても似た設定の「イルマーレ」という映画があって、それは2年を超えて2人は手紙を交換し恋をして、運命も変えようとする。運命を変えるのは欧米的、運命を受け入れる方がアジア的に感じる。私には、似た設定でもこっちのほうが好きかな。

そういえば、2008年には日本で、今度は携帯電話が明治時代にタイムスリップして通話して恋をさせる映画ができるようだ。3度目のどじょうを狙うのは、さすがにきついな。


  • 2003年/香港/91分 ※韓国映画『リメンバー・ミー』の香港リメイク
  • 監督:滕華濤 タン・ファータオ Teng Hua-Tao
  • キャスト:朱孝天 ケン チュウ(Ken Chu)(F4)、梁詠 ジジ リョン(Gigi Leung)


2007年11月17日土曜日

無用|Useless / Wuyong


3部構成の中国のファッションに関わる人たちのドキュメンタリー。

  • 1部:大量生産を営む臨海部の民衆
    広東省にある服の工場。裁断、ミシン、チェック、、、など工場のラインを横移動で撮影して行くシーンは最初から、立ってご飯を食べる姿など、いかにも中国に持っているイメージ通りの大量生産「ライン」を強く意識させられる
  • 2部:大量生産否定のアーティスト
    大量生産に疑問を感じて手作りブランドをテーマにしているマー・クーという新進のファッションデザイナー
  • 3部:大量生産否定じゃなく折り合いを付けて生きている内陸部の民衆。
    中国内陸。監督の故郷山西省の湾岸生産の大量生産品にふつうの仕立て屋を廃業に追い込まれて細々と営むリフォーム店や、炭坑労働者などの民衆が描かれる。

民衆が(都会も内陸も)、たくましく生き生き描かれていると感じ、なんだか日本の昭和を見ているみたいで、これはこれで良いではないかと思えた。アーティストはオリジナリティを感じられなくて魅力なし。結局よかったのは、中国民衆のエネルギーの方。

上映後の監督インタビューで、彼には「ドキュメンタリー的に撮る監督映画」という評があるそうだが、これはその逆で、ドキュメンタリーっぽくないドキュメンタリー映画だったので、そこも技術的なところで興味深かった。

こういう地味な主題の映画なのに、東京国際フォーラムホールC(1502席)がほぼ埋まっていた。プレス含みとはいえ、注目度はたいしたものだと思うが、これも東京だからだな。

  • 中国/2007/84分
  • 監督:賈樟柯 ジャ・ジャンクー
  • プロデューサー:趙濤 チャオ・タオ
  • ヴェネチア国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞

2007年11月3日土曜日

めがね


ゆったりと、ストレスフリーの、アクアセラピーを受けたような気分でした。


  • 2007年/日本/109分
  • 監督・脚本:荻上直子
  • キャスト:小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ


2007年10月27日土曜日

かもめ食堂


これはもう、タイトルがすごい秀逸で、まいりました。”かもめ食堂”っていうだけで、わくわくしてお店に行ってみたいって思うもの。フィンランド、、、行ってみたいかも。夏に。

  • 2005年/日本/102分
  • 監督:荻上直子
  • キャスト:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ
  • 公式サイト www.kamome-movie.com/


2007年10月24日水曜日

遠い道のり|最遙遠的距離|The Most Distance Cource


『藍色夏恋』以来のグイ・ルンメイを見に、仕事を早退して見に行った。

台湾の東側をぽてぽてと目的なくのんびりまわる旅をしたいーーそんな気にさせてくれる気持ちのよい風景と自然の音がいくつかあっただけでも大収穫だったが、随所に中途半端さキレの悪さを感じて残念。映画としてはもっと思い切った方が、よいロードムービーになっただろうに。彼女の設定も現実的に不自然さは否めない。

グイ・ルンメイは、今では人気が定着(拡大?)しているらしいが、『藍色夏恋』の彼女自身を超えるのは、たやすいことじゃないと思う。早くよい監督、よい脚本に巡り会ってほしいものだ。


  • 2007年/台湾/110分
  • 監督:林靖傑 リン・チンチェ
  • キャスト:桂錀鎂 グイ・ルンメイ、莫子儀 モー・ズーイー、賈孝國 ジア・シャオグオ
  • Website:http://www.wretch.cc/blog/Distant2007
  • 六本木ヒルズ ヴァージンシネマ 東京国際映画祭にて
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv37392/



2007年10月22日月曜日

真昼ノ星空


なんでワン・リーホンが日本映画に?・・・と思ったが、よく考えると、飛行機でも船でも、日本の本土から行くより台湾からの方が近いんですよね、沖縄は。台北旅行したとき空港の出発ボードに「那覇」があったので、ああ、そういえば近いんだと思ったっけ。台湾の人には一番近い外国なんだなと。しかし、ワン・リーホンってすごい、才能が。ピアノもバイオリンも歌も、その上、俳優まで。

あとこの映画、主要な俳優が彼と鈴木京香だけなので、じっくり散漫にならずに、かつ沖縄の空気温度みたいなものを感じながら見ることができた。最近気がついたのだが、どうも、登場人物が少ない映画の方が好きらしい。

上の記事を書いて半年後、5月のGW直後、沖縄に行った。妻は台北から国際線で。おれは羽田から国内線で。那覇の国際線空港は、地方の国内線空港並みに簡素で、微笑ましい国際空港だった。国内線ターミナルはすごい豪華なのに。台北=那覇の飛行時間は1時間半。近い近い。台湾からの旅行客はけっこう多い。沖縄の海と白い砂浜のきれいさは、台湾や香港でもよく知られているらしく、リゾートとして旅行に来る人が多い。


  • 2004年/日本/92分
  • 監督:中川陽介
  • キャスト:鈴木京香 、王力宏(ワン・リーホン) 、香椎由宇
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv35879/


2007年10月21日日曜日

アヒルと鴨のコインロッカー


ボブ・ディランファンとしては、「風に吹かれて」がテーマソングだというだけで見ない訳にいかんだろうと恵比寿へ。実際には、たいした使われ方じゃなかったので腰砕け。とはいえ、割といつも早めにオチ

が見えてしまう私が、そういう見かたをするのを忘れて、ただ話や人を追うことに専念した、ってことは、感情移入できたってことらしい。まあ、見てよかった。

個人的には、キャストの中では松田龍平がよい。彼の存在感は好き。NANAでも私の収穫は彼ぐらいだった。

同じ、ディランをテーマに使う映画は、割とよくあるが、『アイデン&ティティ』の方が、しっかり扱っていて、ファンとしては嬉し。


  • 2006年/日本/110分
  • 監督:中村義洋 原作:伊坂幸太郎
  • キャスト:濱田岳 、瑛太 、関めぐみ、松田龍平、大塚寧々


2007年9月24日月曜日

ふたつの時、ふたりの時間|WHAT TIME IS IT THERE?


トリュフォーの「大人は判ってくれない」のオマージュシーンがあったりして、あ、そういう背景があって台北=パリなのね、という気づきはあったけれど、この人の映画は、やっぱり苦手みたい。


  • 監督・脚本:蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)
  • 出演:李康生(リー・カーション)、陳湘淇(イップ・トン)、苗天(ミャオ・ティエン)、陸筱琳(ルー・シャオリ-ン)、ジャン=ピエール・レオー
  • 製作年:2001年/製作国:フランス+台湾/時間:116分


2007年9月4日火曜日

悲情城市


舞台は台湾台北郊外。日本の敗戦に始まり、台北に国民党政権が誕生するまでの4年間、社会の変化に翻弄される一家を中心の物語。

清に支配され、日清戦争に負けて日本に割譲され支配され、ようやく解放されると思ったら、大陸からやってきた外省人に支配される。そんな、辛い歴史的政治的背景について考え、そして最近何人かできた台湾の友人のルーツについて考えさせられた。文化的に全くかけ離れた国の映画を見るよりも接点が多いからか、ちょっとずらすだけで理解できる感じがある。

この映画に出てくる台北郊外の九分の生活シーンは、日本式と中国式の不思議な折衷になっていて、それらを見ているだけでもとても面白い。3月に初めて台北に旅行に行ったので知識も間違いなく増えているのだが、知れば知るほど、世界の中で一番近い国になってきた。台湾の映画は当分いろいろ見ることに決定。

「非情」ではなく「悲情」なんだね。


  • 1989年/台湾/159分
  • 監督:侯 孝賢(ホウ・シャオシエン) 脚本:呉 念眞、朱 天文
  • 出演:トニー・レオン、シン・シューフェン、リー・ティエンルー


2007年9月1日土曜日

七人の侍


約十年ぶりに見た。

今回は数ヶ月前に小津安二郎の映画を見たからか、すごく違いを感じた。どちらも世界レベルだが、小津は渋み、細かなところまでの完成度がすごく、これは豪速球の切れ、強さみたい。

日本人だったら、日本以外の人にもしっかり伝えられるくらいに彼らの良さをよく理解していたいものだと思った。次は「生きる」かな。


  • 1954年/日本/207分
  • 監督:黒澤明 脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄
  • キャスト:志村喬(勘兵衛)、稲葉義男(五郎兵衛)、宮口精二(久蔵)、千秋実(平八)、加東大介(七郎次)、木村功(勝四郎)、三船敏郎(菊千代)
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv23786/


2007年8月26日日曜日

長江哀歌|三峡好人|STILL LIFE


彼の映画は『世界』もそうだったけど、現代中国のテーマの切り取り方がすごい。貧富の差とか、都市と農村の差とか、中国が抱えている問題を説明的でなく普通の人の生活を通してみせてくれる。大本営発表のような細部がわからない上からの情報ではなく、民衆から細部からを見せる。テーマはそれは中国だけのことではなく世界のそこかしこで起こっていることなのだろうが、私は日常、そういう感覚から疎くなりがちなので、すごく刺激にもなる。

とかく中国映画というと、演出過剰で劇画風な映画が多いイメージがあるが、彼はその辺がまったく違っていてすごくよい。風景もきれいすぎる観光写真と違って、霧に煙っているのか、砂で煙っているのかよく見えない風景がまたとてもリアルだ。

  • 原題:三峡好人 英語題:STILL LIFE
  • 2006年/中国/113分
  • 監督・脚本:ジャ・ジャンクー 賈樟柯
  • 撮影: ユー・リクウァイ、音楽:リン・チャン
  • キャスト:チャオ・タオ 趙濤、ハン・サンミン 韓三明、ワン・ホンウェイ 王宏偉
  • 配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
  • オフィシャルサイト http://www.bitters.co.jp/choukou/
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv36244/


2007年8月23日木曜日

モン族の少女 パオの物語 / Chuyen Cua Pao / THE STORY OF PAO


ベトナム北部のモン族の少女パオと2人の母の実話をもとにした物語。去年ベトナム北部のサパに旅行に行ったので、その近辺に暮らす少数民族を題材にした映画だというので興味があり、事前知識は特になく観に行った。素朴な映画を勝手に想像していたが、逆にすごくモダン。人の描き方も単純明快ではなく深い。シナリオも後半は驚きの連続。観といてよかった。

映画の善し悪しには関係ないけれど、トラン・アン・ユン監督のテイストに似ているなーと思ったら、後で監督は『夏至』や『青いパパイヤの香り』のキャストだったと知り、なるほど。おまけに、彼の妻がパオ役の女優だと知り、ベトナムの監督ってみんな?、、、と2度びっくり。


  • 2006年/ベトナム/97分
  • 監督・脚本:ゴー・クアン・ハーイ
  • 原作:ドー・ビック・トゥイ(短編小説「石垣越しのモン笛の音」)
  • 撮影:コーデリア・ベレスフォード、音楽:グエン・ティエン・ダオ
  • キャスト:パオ:ドー・ティ・ハーイ・イエン、キア(育ての母):グエン・ニュー・クイン、シム(産みの母):ドー・ホア・トゥイ、チュー:チャン・ドアン・チュアン
  • オフィシャルサイト http://www.imageforum.co.jp/pao/


2007年8月12日日曜日

トニー滝谷


もともとお気に入りの監督の一人で(会社物語、つぐみ、東京マリーゴールド、味の素のCMも)、あちこち気に入るシーン・台詞がいくつもあって。でも、他の映画とは違って実験的な映画だったのだが、自分にとっては素直に受け入れられる変な感じ。原作は読んでいないけれど、昔けっこう読んだ村上春樹小説に感じた温度の低い世界をとても感じるし。小説だけじゃなく絵的なところで共感している自分がいる。それがどこから来るのか、見終えてもわからなくて気持ち悪かった。

でも、ちょっと思い出して調べて、わかった。

エドワード・ホッパー!、、、だったのか。

オフィシャルサイトを読んでたら、市川監督のコメントに「エドワード・ホッパーの絵画のような空白の多い画面になぜか惹かれ、小劇場のようなシンプルな舞台を高台の空き地に建てて、その舞台の微妙なアンングル替えと、簡単な飾り替えだけで、ほとんど全てのシーンを撮影したことも、、、」。

確かに、村上春樹は、あの時代のアメリカ東海岸あたりの作家をとても好きでしたね。案外、彼も思い浮かべながら書いていたかも。

映画ももちろんだけど、最近すっかり忘れていたお気に入りの人をもうひとり思い出させてくれて二度感謝。さっそく画集を見直した。ついでに、スコット・フィッツジェラルドも読み返したいかも。

  • 2005年/日本/76分
  • 監督:市川準
  • 原作:村上春樹
  • 音楽:坂本龍一
  • 撮影:広川泰士
  • キャスト:イッセー尾形(トニー滝谷/滝谷省三郎)、宮沢りえ(A子:小沼英子)/B子:斉藤久子)、西島秀俊(語り)
  • オフィシャルサイト http://www.tonytakitani.com/
  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv34645/


2007年7月15日日曜日

それでも生きる子供たちへ|All the Invisible Children


この映画は、今時の世界によくある子供たちにとって厳しいシーンを描いている。大人って、自分が子供のときにやられたことを知っているはずなのに、大人になると、子供に同じことをしてしまう。でも、この映画に出てくる子供って(みんなじゃないけれど)、それでも生きてる。たくましい。

ドキュメンタリーを下敷きにしたフィクションだが、逆に痛々しいだけのドキュメンタリーよりもテーマがよく伝わってきた。今年映画館で見た映画のNO.1。7人の監督がちゃんと同じテーマに着地させることができていて、見終えてどれも甲乙付けがたかった。

最後に出たフレーズ「大人は誰も昔は子供だった。そのことを忘れずにいる大人はほとんどいない。(サン-テグジュベリ)」に激しく納得。


  • 原題:All the Invisible Children
  • 2005年/イタリア,ヨーロッパ/130分
  • 製作:MARIA GRAZIA CUCINETTA/CHIARA TILESI/STEFANO VENERUSO
  • 監督
    1:TANZA メディ・カレフ MEHDI CHAREF(ルワンダ)
    2:BLUE GIPSY エミール・クストリッツァ EMIR KUSTURICA(セルビア・モンテネグロ)
    3:JEASUS CHILDREN OF AMERICA スパイク・リー SPIKE LEE(アメリカ)
    4:BILU E JOAO カティア・ルンド KATIA LUND(ブラジル)
    5:JONATHAN ジョーダン・スコット、リドリー・スコット JORDAN SCOTT/RIDREY SCOTT(イギリス)
    6:CIRO ステファノ・ヴィネルッソ STEFANO VENERUSO(イタリア)
    7:Song Song & Littele Cat ジョン・ウー JOHN WOO(中国)
  • 後援
  • 財団法人日本ユニセフ協会 http://www.unicef.or.jp/top1.html
    WFP 国連世界食糧計画 http://www.wfp.or.jp/
    イタリア大使館
  • 公式サイト http://kodomo.gyao.jp/


2007年7月6日金曜日

ウミヒコヤマヒコマイヒコ


前衛舞踏家・田中泯、すごいです。インドネシアの自然人々とのダンス/パフォーマンスも。何が常人と違うのか? きっと感受性。周りのものを感じ取るセンサーがすごいのだろう。表現したい気持ちがあっても鈍感な人=感じ取る力が弱い人って、単なる独りよがりでだめだけど。異文化の中でも、通じる表現ができる彼はすごい。あるいは、そんなこと関係なく彼が普遍的な存在でありえているのか。

映画として見ると、まわりのスタッフの仕事が足を引っぱってる感じ。編集も、グラフィックも。田中泯という素材がここまでよかったら、変な味付けせずに切れのよい仕事にできなかったのかなと、残念。

田中泯に★★★★




2007年7月1日日曜日

緑茶|Green Tea


大学院生ウー・ファンと、バーでピアノを弾く女性ランラン。そっくりだが性格は正反対。その両方を好きになる男ミンリャンの話。昼の北京のカフェで緑茶を飲みながらのシーンが多い。緑茶は、日本のと違ってグラスに注がれた湯にお茶の葉を注ぎ入れるので湯の中でゆらゆらする茶葉を見ているだけで飽きない。そこで語られるウー・ファンの話が毒気があって面白い。全編の表現は、スタイリッシュというか、洗練されている。テーマも、決して押しつけ感がない。その辺がモダンだ。よい意味で私のイメージしてきた中国映画じゃない。

ここ最近、自然に見られる中国映画が増えてきた。この「緑茶」もそうだが、他では「世界」(賈樟柯 ジャ・ジャンクー監督)も。2人とも1960年から70年代生まれで、彼らを中国映画の監督第六世代というそうだ。

ちなみに、張藝謀(チャン・イーモウ)に代表される第五世代の監督たちは、国の開放政策のなかで、国家予算で映画を作ることができた。 一方、第六世代は、独力で資金を調達しなければならなくなり、自然とインディペンデント映画的になっていった。どこの国にもいるインディペンデント系の人とどこか同じにおいがするなと思ったが、なるほど。

当分、彼らの世代に期待していこう。夏には賈樟柯監督の『長江哀歌(原題 / 英題 : 三峡好人 / STILL LIFE)』も見られるし。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv35526/
  • 2002年/中国/89分
  • 監督: チャン・ユアン 張元 Yuan Zhang 撮影監督:クリストファー・ドイル 杜可風 Christopher Doyle
  • 出演:チアン・ウェン 姜文 Jian Wen/チン・ミンリャン、ヴィッキー・チャオ 趙薇 Vicki Zhao/ウー・ファン、ランラン


2007年6月23日土曜日

大人は判ってくれない|Les Quatre Cents Coups


本当のことを言ってもわかってもらえないし、力では大人にかなわないし、大人は頭ごなし。だから反抗する、逃げる。小さな嘘から、小さな犯罪をし、それを止めてくれる大人も叱ってくれる大人もいない、愛情もかけてもらえない。信頼できるのは親友との友情だけ。鑑別所に送られ、そこも逃げ、走る。

全編通して、12歳のアントワープ少年の眼から、できの悪い大人ばかりが描かれているが、時代が変わっても今の時代も同じようなものかもしれない。大人は自分が子供だった頃のことを忘れてしまうものなのか。ばかですね。しかし、大人になればなったで、その上には老頭、既得権益に死ぬまでしがみつく人たちがいるし、順繰り順繰り。・・・まいった。

20年前にオールナイト5本立てかなにかで見たことは覚えていたが、内容は全然覚えていなかった。今の方がずっとわかる。20年前に共感できる自分でありたかった。それが残念。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv12862/
  • 原題:Les Quatre Cents Coups
  • 1959年/フランス/100分
  • 監督:フランソワ・トリュフォー
  • キャスト:Jean Pierre Leaud ジャン・ピエール・レオ (Antoine Doinel)、Claire Maurier クレール・モーリエ (His Mother)、Albert Remy アルベール・レミ (His Father)、Guy Decomble ギイ・ドコンブル (Petite Feuille)



2007年6月22日金曜日

終電車|Le Dernier Metro


1944年のドイツに侵略されたパリが舞台。カトリーヌ・ドヌーブ演じるマリオンがユダヤ人夫を劇場の地下室にかくまって、そこにレジスタンス、ドイツにとり入る人、ドイツ将校などの思惑が交錯し、そこに男2人女ひとりの物語というフランス映画によくあるシチュエーションが重なり進んで行くサスペンス。しかし、地下室に隠れていつ見つかって収容所に送られるとも知らない身でありながら新作の演出にこだわったり、妻の恋の行方にどこか楽しげな夫、レジスタンス活動をしながらもやはり俳優を楽しんでいる男。重くも描ける題材なのに、そうではなく、しっかりエンタテイメントに仕上げるあたりは、さすがに晩年のトリュフォーたる所以か。細かいところの作りもさすがにちゃんとしていたので、安心して楽しめました。

しかし、トリュフォーって脚フェチだったんだね。どの映画もそう。もしかしてフランス男って多いのか~?

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv11319/
  • 原題:Le Dernier Metro
  • 1980年/フランス/131分
  • 監督・脚本:Francois Truffaut フランソワ・トリュフォー
  • 撮影:Nestor Almendros ネストール・アルメンドロス
  • 音楽:Georges Delerue ジョルジュ・ドルリュー
  • キャスト:Catherine Deneuve カトリーヌ・ドヌーヴ (Marion Steiner)、Gerard Depardieu ジェラール・ドパルデュー (Bernard Granger)、Jean Poiret ジャン・ポワレ (Jean Loup Cottins)


2007年6月16日土曜日

紅いコーリャン|紅高梁



  • Red Sorghum 紅高梁
  • 1987年/中国/91分
  • 監督:Zhang Yimou 張藝謀 チャン・イーモウ
  • キャスト:Gong Li 鞏俐 コン・リー (九児)、Jian Wen 姜文 チアン・ウェン (余占鰲)、勝汝駿 トン・ルーチェン (羅漢)


2007年6月2日土曜日

アメリカの友人|Der Amerikanische Freund


ストーリーは荒いと思うし部分の完成度を求めたらいろいろでてくる。
けど、そういう細かいところじゃなく、勢いとか、雑なところとか含めて、かっこいい。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv11130/
  • Der Amerikanische Freund
  • 1977年/西ドイツ、フランス/126分
  • 監督:Wim Wenders ヴィム・ヴェンダース
  • 製作:Michael Wiedermann ミハエル・ヴィーデマン、Pierre Cottrell ピエール・コトレル
  • 原作:Patricia Highsmith パトリシア・ハイスミス
  • 撮影:Robby Muller ロビー・ミュラー
  • 音楽:Jurgen Knieper ユルゲン・クニーパー
  • キャスト:Dennis Hopper デニス・ホッパー (Tom Ripley)、Bruno Ganz ブルーノ・ガンツ (Jonathan Zimmermann)


2007年6月1日金曜日

パリ、テキサス |Paris Texas


学生の時分に観た映画を20年以上も経ってから見ると感じることが全然違う。それなりに社会経験もして、知っていることが多くなってきたからか、ことごとく違っている。それに、まだ制作国が、西ドイツ。壁の崩壊は1989年11月9日だから、世界情勢も凄く違っていた時代に作られていたけれど、自分もずいぶん、成長したということだろう。成長していることの確認としては嬉しいが、当時の未熟さを知るとちょっと残念。

とはいえ、パリ、テキサス。やっぱり良かった。最高。よかったイメージだけは残っていたけれど何が?というと具体的に言えないくらい遠い彼方にいってしまっていた。ライ・クーダーの音楽もサントラ買っていたくらいだが、映像と一緒になるとやっぱり格段によい。ナスターシャ・キンスキーもやっぱりよいし。これで、あらためてMYお気に入りリストに復活できたのは、旧友に会えたみたいですごく嬉しい発見。

どうでもよいことだけど、ジョン・ルーリーがちょい役で出てたのね。当時は彼のこと知らなかったけど。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv11080/
  • 1984年/西ドイツ フランス/146分
  • 監督:Wim Wenders ヴィム・ヴェンダース
  • 脚本:Sam Shepard サム・シェパード
  • 音楽:Ry Cooder ライ・クーダー
  • キャスト:Harry Dean Stanton ハリー・ディーン・スタントン(Travis)、Nastassja Kinski ナスターシャ・キンスキー(Jane)、Dean Stockwell ディーン・ストックウェル(Walt)、Aurore Clement オロール・クレマン(Anne)、Hunter Carson ハンター・カーソン(Hunter)


2007年5月29日火曜日

迷子


  • 2003年/台湾/88分
  • 監督・脚本:李康生 リー・カンション、製作:蔡明亮 ツァイ・ミンリャン
  • キャスト:陸奔静 ルー・イーチン、ミャオ・ティエン、チャン・チェア


2007年5月25日金曜日

紅夢 | 大紅燈篭高高掛|Raise the Red Lantern


怖い。作り物のホラー映画なんかよりずっと怖い。人の恨みとか妬み、憎悪って。

赤と蒼と白を思いっきり意図的に構成した映像が隙なく決まっていて美しいが、それもかえって冷たくて怖い。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv16303/
  • 大紅燈篭高高掛/1991年/香港 中国/
  • 監督:チャン・イーモウ 張藝謀 Zhang Yimou
  • 製作総指揮:ホウ・シャオシェン 侯孝賢 Hou Hsiao Hsien、チャン・ウェンツゥオ 張文澤 
  • キャスト:コン・リー 鞏俐 Gong Li(頌蓮)、ホー・ツァイフェイ 何賽飛 Caifei He(梅珊)


2007年5月20日日曜日

東京物語


脱帽です。

この完成度へのこだわり、美意識。人の気持ちの細かい動きまでも表現する細やかさ。凄い。この厚み、深みは、他で見られない。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv23661/
  • 1953年/日本/135分
  • 監督:小津安二郎
  • 脚本:野田高梧 ノダ、小津安二郎 撮影:厚田雄春 録音:妹尾芳三郎
  • キャスト:笠智衆 / 東山千栄子 / 原節子 / 杉村春子 / 山村聰 / 三宅邦子 / 香川京子 / 東野英治郎 / 中村伸郎 / 大坂志郎


2007年5月19日土曜日

シクロ|CYCLO


アジアの映画を見ると、行きたくなるような作りをしている観光案内映画は数多いけれど、この映画は毒が強いので、私は行きたくなるが、行きたくない人も出てくるだろう。貧困、汗、暴力などの現代ホーチミンの裏の毒だ。

場面は10数年前のベトナムホーチミン。豪華な高層ホテルが建ち始める一方でその隣にはスラム街が広がる。主人公は、シクロと呼ばれる輪タクの運転手として働く青年(レ・ヴァン・ロック)。シクロを盗まれたのを期に、犯罪に加担せざるを得なくなり、徐々に精神が壊れていく。1作目「青いパパイアの香り」で、静かでみずみずしいベトナムの美しさを描いたトラン・アン・ユン監督が、一転してどろどろしたテーマを描いている。

毒がない花は退屈とも言えるし、ひっかかりがなくスムーズな造形は面白くないので、これは私的には、あり。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv29692/
  • 1990年/フランス、香港、ベトナム/128分
  • 監督:Tran Anh Hung トラン・アン・ユン
  • 音楽:Ton That Tiet トン=ツァ・ティエ
  • キャスト:Le Van Loc レ・ヴァン・ロック、Tony Leung 梁朝偉 トニー・レオン、Tran Nu Yen Khe トラン・ヌー・イェン・ケー、Nguyen Nhu Quynh グエン・ヌ・キン
  • 第52回(95年度)ヴェネチア国際映画祭グランプリ



2007年5月14日月曜日

晩春



  • 1949年/日本/108分
  • 監督:小津安二郎 原作:広津和郎「父と娘」
  • キャスト:笠智衆、原節子、杉村春子、ほか


2007年5月6日日曜日

珈琲時光


侯 孝賢(ホウ・シャオシエン)繋がりで見たのだが、ほんとに台湾の映画監督なのか??。まいった。小津安二郎生誕100年を記念して作られた日本映画なのに、最近の日本映画よりもはるかに日本映画していた。よい意味で。

特に、日常の美しいしぐさをきれいに撮っていたのが印象的。ベトナムの「青いパパイヤの香り」の料理や食事のシーンの美しさを思い出した。

私のお気に入りリスト入り。

小津映画、侯孝賢映画、東京をテーマにしたいろいろな映画を観よう。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv34320/
  • 2003年/台湾・日本/104分
  • 監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
  • 出演:一青窈、浅野忠信、小林稔侍、余貴美子
  • 主題歌:「一思案」(作詞:一青窈 作曲:井上陽水)


2007年5月5日土曜日

芙蓉鎮


  • 1987年/中国
  • 監督:謝晋 シェ・チン
  • キャスト:劉暁慶 リュウ・シャオチン(胡玉音)、姜文 チアン・ウェン(秦書田)


2007年5月3日木曜日

バベル | BABEL


ここまで涙が流れ、人が泣き、叫ぶ映画を初めて見たかもしれない。他人が涙を流すまでのプロセス、善人の涙の訳ををたくさん。それも伝えたいのに伝わらないもどかしさの結果表現としての涙。なんだか最近、喜怒哀楽が減って、めったなことでは涙を流していなかった自分が、涙を流せそうな気になった。これが最大の発見。

そういう意味で、自分にとって記憶に残る映画になったし、とても見る意味があった映画になった。

ブログのレビューは賛否両論のようだったが、私にはよかった。

また、シナリオ、監督の演出について。世界3カ所で展開する物語をだんだんピースがはまるように観客に理解させるというのは、チャレンジングなことだったと思う。それだけでもすでに評価に値すると思ったのだが、実際、私はぐいぐい引き込まれ、そこそこ理解力は要求されたが、ちょうどよい歯ごたえで理解できた。監督と脚本の力だと思った。

アカデミー賞監督賞もなるほど納得。


  • 2006年/アメリカ/143分
  • 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
  • 出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子
  • 公式サイト:http://babel.gyao.jp/


2007年4月29日日曜日

ココシリ | Kekexili:Mountain patrol


中国チベットのココシリ地区で実際に90年代にあった、チベットカモシカ密漁団と森林警備隊との戦いの事実をもとに描いた映画。

ひとことで言うとショック。人はこうもあっさりと死んでしまうのか。少なくとも映画の中ではなかなか死なないものだと思っていたのに。この映画では、勧善懲悪ものでいうところの善の側の人でさえも、あっさりと死んでしまう。

しかしほんの10年前のチベットの人々には、それはショックなことではなく、現実はそういうものなのだったのだ。今の自分のぬるい意識に、とにかくクッサリ刺された。

同じ日にニュースで、内モンゴル自治区の元遊牧民族の人たちの貧しい生活の様子を知った。

命の使い道について、あらためて考えないと。


  • 2004年/中国/95分
  • 監督:ルー・チュ—アン
  • キャスト:ドゥオ・ブジエ、キィ・リャン
  • 公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/site/top.html



2007年4月28日土曜日

宋家の三姉妹 | THE SOONG SISTERS


長女は大財閥の御曹司、次女は孫文、三女は蒋介石と結婚という、ちょっと普通じゃない事実を元にしている。

あまり期待しないで見たのだが、知識的なおもしろさと、ドラマ的なおもしろさのバランスがとても良かった。2時間半ほどの長さで、テンポも演出も抑えめだったけれど、ちょうどよい感じ。映画というよりお正月の特番のドラマ的に面白かった。

政治的にも、思ったほど寄ってなく、ちょっと左かなと思うけど、まーバランスとれてた。

NHKの「その時歴史は動いた」とかスカパー!「ヒストリーチャンネル」好きなので、それと同じような感覚で楽しめた。

こういうのみると、もうちょっと歴史事実を調べたくなる。


  • 1997年/香港/145分
  • 監督:メイベル・チャン
  • 出演:姜文、ミシェール・ヨウ、マギー・チャン、ヴィヴィアン・ウー


2007年4月22日日曜日

ニライカナイからの手紙


沖縄、八重山諸島の竹富島と東京が舞台。

東京に暮らしていると当たり前の常識も、向こう側から見ると常識なんかじゃないんだな。そんな当たり前のことを、自然に、ゆっくりと教えてくれた。特に、いろいろと対比できるのでわかりやすかった。人間関係の希薄さと濃さ、夢のあるなし、色の豊かさと灰色、敏感と鈍感、、、。あとコミュニティのありかた。

蒼井優の演技も良かったけれど、知識的なおもしろさもあり。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv34792/
  • 2005年/日本/113分
  • 監督:熊澤尚人
  • キャスト::蒼井優 アオイユウ(安里風季)、平良進 タイラススム (安里尚栄)、南果歩 ミナミカホ(安里昌美)


2007年4月21日土曜日

Hole | 洞


未知のウィルスが蔓延する台北。きれいではない水、雨でいつも映画がじめじめ濡れている。だからなのか、気持ちが晴れることなく延々と続く。不安が大きなサプライズで霧散して気持ち良くなるのならそれも良いが、もやもやじめじめした気持ちが強く残る。しつこいくらいにじめじめな世界に嫌気がさした頃に、天井から差し伸べられた手。乾きに乾いた喉においしい水(逆か)みたいで、狙い通りにやられたということかも。

本当は主題は、「上の階の男と下の階の女とその間に出来た穴」。この映画の背景には、平和ボケの日本人には想像できない、台湾の現実にある不安があるのはのだろうかと思うが、今の私の理解力、知識だと全然辿りつけない、深く見ることができない。


  • 1998年/台湾/
  • 監督:蔡明亮 ツァイ・ミンリャン Tsai Ming-Liang
  • キャスト:Yang Kuei Mei 楊貴媚 ヤン・クイメイ (美美)、Lee Kang sheng 李康生 リー・カンション (小康)


2007年4月8日日曜日

ポリス インサイド・アウト | THE POLICE INSIDE OUT


20年以上前のポリスがドサ回りからのし上がっていく様を、3人のひとりであるスチュワート・コープランドが裏側から撮っていた8ミリフィルムを編集したドキュメンタリー。

解散してもう20年以上。その間、再結成しないかなとか思ったときもあったけれど、たった5年で頂点までいってスパッと解散、そういう終わりかたが、らしくてよかったバンドだなと思った。というか、あれ以上の上はなかったし、別のやりかたもなかっただろう。他にいる長寿バンドのようにはなれない人たちだった。このドキュメンタリーを見て思った。

ポリスファンの私としては、ひとつ納得できた感じ。


  • 監督・脚本・プロデューサー:スチュアート・コープランド
  • 出演:スティング、アンディ・サマーズ、スチュアート・コープランドほか
  • 公式サイト:http://thepolice.jp/indexp.html
  • 映画館:TOHOシネマズ六本木ヒルズ


2007年4月7日土曜日

アルゼンチンババア


さすが、役所広司、鈴木京香。演技力見せてくれます。でもあとはダメ。全然引き込まれなかった。ちなみに原作は短編なのだそうだ。あー、なんだか納得。
  • 2007年/日本/112分
  • 監督:長尾直樹
  • 原作:よしもとばなな
  • 出演:役所広司 鈴木京香
  • 公式サイト:http://www.arubaba.com/
  • 映画館:渋谷 Q-AXシネマ

2007年3月11日日曜日

チョムスキーとメディア マニュファクチャリング・コンセント


この映画、というか、このチョムスキーという人、噛み応えありすぎ。言語学の権威だとは事前に聞いていたけれど、凄い手強い。

この映画でチョムスキーは、メディアによる自己規制によってごく自然に情報の歪曲が行われている社会システムの存在、国家レベルの凶悪な具体例を、彼の調査・根拠をもってテンポ良く自信を持って私に再確認させてくれる。そして、一般の権力側でない人がやるべきこと・できることを提示してくれる。3時間という長い映画だが、それをまったく長く感じさせない。それは、いつのまにか映画を見ながら考えさせられ参加させられたからだろう。自分って、ある程度わかっているつもりだったけど、齧って自己完結しているだけじゃだめなんだ、わかっている人は行動をしなきゃ、できることからはじめなきゃ。

ということで、著作読んで、少しでも理解増やして、考えとか行動が進んだら、あらためて書き込もう。このテーマについては、簡単に書けませんわ。

映画のキャッチフレーズ
「新聞もテレビも、なぜ同じニュースばかり流すんだろう? アメリカの”良心”ノーム・チョムスキーが解き明かすメディアの仕組み」

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv36056/
  • 1992年/カナダ/167分(第1部95分・第2部72分)
  • 監督:マーク・アクバー&ピーター・ウィントニック
  • 出演:ノーム・チョムスキー
  • 公式サイト:http://www.cine.co.jp/media/
  • 映画館:渋谷 ユーロスペース

2007年2月24日土曜日

さくらん


映画のパーツパーツは、見どころが多い。特にグラフィック。さすが各業界の注目の才能がやってるだけある。しかし残念でしょうがないのは、とにかくバラバラ、散漫。映画としての完成度は最初から諦めて、とにかく個性を見せつけるんだと割り切っていたかも。けど、だとしても、脚本と編集(監督の編集能力を補佐する人?)にはプロをつけて欲しかった。原作から変なところ削ってかえってわかりにくくしてるし、逆に余計な話をくっつけて、それが日暮の良さである切れ味を甘くして終わらせてしまった。とにかく残念。

忌野清志郎が一瞬出てたけど、ファンだけど、全然嬉しくなかった。ほかにも色々出ていたみたいだけど、そういうの余計な出演者のせいで、せっかく流れている話の緊張感が途切れてしまう。どうしてそういうことするかなー。売れるためにはいろいろ仕込まなきゃってことかもしれないけど。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv36489/
  • 2007年/日本/111分
  • 監督:蜷川実花
  • 原作:安野モヨコ 音楽:椎名林檎
  • 出演 :土屋アンナ 、椎名桔平 、菅野美穂 、木村佳乃

2007年2月12日月曜日

それでもボクはやってない


ショック。無罪を出すということは、検察にも警察にたてつくこと、つまり国にたてつくことになる。昇進して偉くなろうと思っている裁判官は、効率よく裁判の数を稼ぎ、正しい裁判のためにいたづらに時間を費やすようなことをやっている人などいないのだろうか。裁判を取り巻く人々もほとんどが公務員≒サラリーマンだということを考えると、信じたくはないが、そうなっているのか。

どこかで、最後の砦として裁判所があると信じてきた。「ほんとうにやっていなかったら、きっと分かってくれるはずだ」と思っていた。はっきり言わなくても分かってくれること助けてくれることを期待していた。しかし、実際問題こうなっているのが全面的ではないにしろ、人によるのだとしても、かなり本当だとすると、私の感覚は大甘なのだと思わざるを得ない。まだ、そういう場面に遭遇しないで生きてこられたのは、とてつもなく幸運なだけだったのかと、突きつけられた心境。

こういう映画ができることで、真っ当な裁判が増えること、真っ当でない裁判=無罪が有罪にされてしまうようなことが行われないような、抑止力になってくれることを願うばかり。


  • 2007年/日本/143分
  • 監督・脚本:周防正行
  • 出演:加瀬亮、瀬戸朝香、山本耕史、役所広司
  • オフィシャルサイト:http://www.soreboku.jp/index.html

2007年1月28日日曜日

不都合な真実 / An Inconvenient Trufh


この映画、見るべき。見て自分を反省しない人、襟を正そうと思わない人は、ほとんどいないはず。

出てくる地球温暖化に関係する事実のほとんどは、前から知っていた。

でもそれに対するとらえ方は、

北極の氷は40年間で40%縮小した。(ふーんそうかー) 南極の氷が溶けると海面が何メートルも上昇する(ふーんまー大丈夫でしょ) 森林伐採どんどんされているよね。(そうだよね困ったもんだよねー) 中国ってどんどん環境汚染してて、その大気が日本に流れてきてるんだよね(ほんと大迷惑だよね) 地球温暖化って、そもそも政治が動かなければどうにもならない大きな問題だからなー。

ぐらいだった。いつもの生活だって、ゴミは減らそうとしてるほうだし、乗っている車は小型車だし、省エネな家電にしてるし、ゴミの分別はこまめにする、、、。環境問題には敏感な方だし、エコな方だと思ってた。

でも、自分って全然ダメダメ。事実を繋げて、ゴアの素晴らしいプレゼンテーションで見せられたら、あー自分は、分かっている風なだけで、モラルのレベルは低かったんだと痛感した。突きつけられた。

それにしても、ゴア。ブッシュとの大統領選挙、僅差で負けたんだったよなー。彼が当選していたら、、、今思ってもしょうがないことだけどなー、残念。でもそこから立ち直って以降、1000回以上、自分で生の声を伝えるために講演に回っているなんて。

あと余談だけど、ゴアのプレゼンテーション技術、見て良かった。ためになった。今まで見た中で一番凄かった。

けど、エコってだんだんうさんくさいビジネス入ってきたから、ちゃんと裏も見ないと・・・鵜呑みにしちゃいけない。


  • 2007年/アメリカ/
  • 監督:デイビス・グッゲンハイム/Davis Guggenheim
  • 製作総指揮:ジェフ・スコル/Jeff Skoll 製作:ローレンス・ベンダー/Lawrence Bender ほか
  • 出演:アル・ゴア/Al Gore(元アメリカ副大統領)
  • 日本版オフィシャルサイト:http://www.futsugou.jp/
  • 英語版オフィシャルサイト:http://www.climatecrisis.net/

2007年1月21日日曜日

世界|The World


北京のテーマパークが舞台。地方出身者が夢を持って集まってくるが、現実を目の当たりにして、ひとつひとつ諦めていく人々が描かれる。きっと世界中のどこの都会でも同じなのだろう。現実に近い世界をこれでもかこれでもかと突きつけ続ける。現実から逃避できる場所として映画館に行く人も多いだろうに。これをみるとネガティブな再確認になる。

人々の夢の象徴である「世界」を、夢をテーマパーク「世界」で済ませる人。そこを仕事場とする人。都会で根無し草の不安感、行き場のない閉塞感を持って生きている人々。このぐらいいいだろう、このぐらいしょうがないだろうと、日頃誰もがやっている小さな罪を目の当たりにして懺悔させて、追い込んで、追い込んで、袋小路に追い詰めて。

でも、追い込まれた袋小路で、後ろの戸が開いて、こっちだよ、とちょっと救われる。空騒ぎな元気な姿で始まり、2時間以上の、目をそらすことのできないシーンの連続は、結局最後に救ってもらった感じ。

こういう映画は、残ってしまいます。いじめられた後に助けられたみたいで、まいった。

ふと、「あの夏、いつか静かな海」を見直したくなりました。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv34528/
  • 2004年/日本,フランス,中国/133分
  • 監督・脚本:Jia Zhang Ke 賈樟柯 ジャ・ジャンクー 撮影:Yu Lik-Wai 余力爲 ユウ・リクウァイ 音楽:Lim -Giong 林強 リン・チャン 製作:オフィス北野
  • キャスト:Zhao Tao 趙濤 チャオ・タオ(Tao)、Chen Taisheng 成泰■ チェン・タイシェン(Taisheng)
  • オフィシャルサイト http://www.bitters.co.jp/sekai/

2007年1月14日日曜日

天空の草原のナンサ


モンゴルの遊牧民の少女が、一匹の犬と出会うことから始まる物語。

モンゴルの人々の生活をしっかり映像で見たのは初めてなのに、前から知っていたようなモンゴルの人々がスクリーンの中にいた。身近ではなかなか見ることができないような笑顔が見られた。文明というものに囲まれて欲望をかき立てられて生きている私の生活からは、絶対得られない自然な生活を見た。大仰な効果音もないし、俳優のオーバーアクションもない。素材のまんまのモンゴルの人々を丁寧に丁寧に写し取られていて、こつこつ素朴にたくましく生活している様子が、すごく自然に伝わってきた。

どうしてそんなに自然に感じたのかと考えたら、「自然を屈服させるのではなく、自然や動物と共に生きる」そんな彼らの人生観が、私も自然に思っていることだったから共感しやすかったのかなと思った。


  • 2005年/ドイツ・モンゴル/
  • 監督・脚本:ビャンバスレン・ダバーン
  • 出演:ナンサル・バットチュルーン、ウルジンドルジ・バットチュルーン、ツォーホル
  • オフィシャルサイト http://www.tenku-nansaa.com/

2007年1月13日土曜日

サトラレ


もし自分の考えていることがまわりに筒抜けになっているとしたら。この映画の設定は荒唐無稽だけれど、そのへんのことは忘れて、どんどん引き込まれた2時間。技術面は突っつく人いっぱいいると思いますけど、現実世界はもっとどろどろですが、そういうことは考える間もなく一気に見た。

終わってからは、いつもあたりまえに思ってしまっていることを、生きるスタンスみたいなものをあらためて考えた。

小さい頃は大人から「嘘をついてはいけません」と言われたのに、いつのまにか大人の世界は「小さな嘘はつくもの」「上手に生きなさい」「正直すぎると馬鹿を見るよ」そんなふうに言われる。納得いかない思いをして今に至る世渡り下手なわたしでも、それなりに社会経験を積むと、汚れたというか、それなりに、時々罪悪感持ちつつ当たり前に生きているけれど。

上手に生きていけない自分の言い訳もありますけど(泣)でも、ずるをしない、嘘をつかないというのは、どうしても基本だなと。

補足。八千草薫さん、寺尾聰さん、あと小木茂光さんの演技、よかった。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv31852/
  • 2001年/日本
  • 監督:本広克行
  • 原作:佐藤マコト
  • 出演者:安藤政信 、鈴木京香 、八千草薫 、寺尾聰 、内山理名 、小野武彦 、小木茂光

2007年1月8日月曜日

硫黄島からの手紙|Letters from Iwo Jima


アメリカ編は、知識としてあたらしい収穫はあったけれど、一本の映画としてみると、金額分の価値はなかったかなと思った。けれど、日本編も見て、アメリカ編は予習だったのだと捉え直すと、意味があったなと考え直した。アメリカ側の物語と日本側の物語の2部構成とした仕掛け側の狙いはあらかじめ想像はついていたつもりだったけれど、実際に見てみると、想像以上にあらためて感じる部分はあるもんです。2本で1本である意味はあった。

なんでもそうだけど、争いごととか犯罪とかは、とかく一方の側からしかとらえない。勧善懲悪な映画は数多いけれど、戦争映画もけっこうそういうのが多い。それが普通の戦争映画だとすると、これは戦争映画ではなかった。一本でそれを伝えようとすると、シナリオが表と裏、現在と昔をジャンプさせたりして、すごい複雑にしてしまう。それを、きちんと2本に分けることにしたので、人間関係も複雑にしないでわかりやすく伝えることが可能になったとも言えるので、それは成功したと思う。

ひっくりかえして反対側から見てみなさいと言うのは、むかし企画の勉強法で習ったことだが、それを2本通して見ることで自然に両側から見る体験ができた。

2時間半はそれほど長く感じなかったし、シートが良かったので、ゆったり思索を巡らす時間もあったし、年始に考える時間とテーマをもらえた。事件の裏と表、加害者と被害者、両方のことを想像できて人としてちゃんと判断できる人でありたい。