2007年8月26日日曜日

長江哀歌|三峡好人|STILL LIFE


彼の映画は『世界』もそうだったけど、現代中国のテーマの切り取り方がすごい。貧富の差とか、都市と農村の差とか、中国が抱えている問題を説明的でなく普通の人の生活を通してみせてくれる。大本営発表のような細部がわからない上からの情報ではなく、民衆から細部からを見せる。テーマはそれは中国だけのことではなく世界のそこかしこで起こっていることなのだろうが、私は日常、そういう感覚から疎くなりがちなので、すごく刺激にもなる。

とかく中国映画というと、演出過剰で劇画風な映画が多いイメージがあるが、彼はその辺がまったく違っていてすごくよい。風景もきれいすぎる観光写真と違って、霧に煙っているのか、砂で煙っているのかよく見えない風景がまたとてもリアルだ。

  • 原題:三峡好人 英語題:STILL LIFE
  • 2006年/中国/113分
  • 監督・脚本:ジャ・ジャンクー 賈樟柯
  • 撮影: ユー・リクウァイ、音楽:リン・チャン
  • キャスト:チャオ・タオ 趙濤、ハン・サンミン 韓三明、ワン・ホンウェイ 王宏偉
  • 配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
  • オフィシャルサイト http://www.bitters.co.jp/choukou/
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv36244/


2007年8月23日木曜日

モン族の少女 パオの物語 / Chuyen Cua Pao / THE STORY OF PAO


ベトナム北部のモン族の少女パオと2人の母の実話をもとにした物語。去年ベトナム北部のサパに旅行に行ったので、その近辺に暮らす少数民族を題材にした映画だというので興味があり、事前知識は特になく観に行った。素朴な映画を勝手に想像していたが、逆にすごくモダン。人の描き方も単純明快ではなく深い。シナリオも後半は驚きの連続。観といてよかった。

映画の善し悪しには関係ないけれど、トラン・アン・ユン監督のテイストに似ているなーと思ったら、後で監督は『夏至』や『青いパパイヤの香り』のキャストだったと知り、なるほど。おまけに、彼の妻がパオ役の女優だと知り、ベトナムの監督ってみんな?、、、と2度びっくり。


  • 2006年/ベトナム/97分
  • 監督・脚本:ゴー・クアン・ハーイ
  • 原作:ドー・ビック・トゥイ(短編小説「石垣越しのモン笛の音」)
  • 撮影:コーデリア・ベレスフォード、音楽:グエン・ティエン・ダオ
  • キャスト:パオ:ドー・ティ・ハーイ・イエン、キア(育ての母):グエン・ニュー・クイン、シム(産みの母):ドー・ホア・トゥイ、チュー:チャン・ドアン・チュアン
  • オフィシャルサイト http://www.imageforum.co.jp/pao/


2007年8月12日日曜日

トニー滝谷


もともとお気に入りの監督の一人で(会社物語、つぐみ、東京マリーゴールド、味の素のCMも)、あちこち気に入るシーン・台詞がいくつもあって。でも、他の映画とは違って実験的な映画だったのだが、自分にとっては素直に受け入れられる変な感じ。原作は読んでいないけれど、昔けっこう読んだ村上春樹小説に感じた温度の低い世界をとても感じるし。小説だけじゃなく絵的なところで共感している自分がいる。それがどこから来るのか、見終えてもわからなくて気持ち悪かった。

でも、ちょっと思い出して調べて、わかった。

エドワード・ホッパー!、、、だったのか。

オフィシャルサイトを読んでたら、市川監督のコメントに「エドワード・ホッパーの絵画のような空白の多い画面になぜか惹かれ、小劇場のようなシンプルな舞台を高台の空き地に建てて、その舞台の微妙なアンングル替えと、簡単な飾り替えだけで、ほとんど全てのシーンを撮影したことも、、、」。

確かに、村上春樹は、あの時代のアメリカ東海岸あたりの作家をとても好きでしたね。案外、彼も思い浮かべながら書いていたかも。

映画ももちろんだけど、最近すっかり忘れていたお気に入りの人をもうひとり思い出させてくれて二度感謝。さっそく画集を見直した。ついでに、スコット・フィッツジェラルドも読み返したいかも。

  • 2005年/日本/76分
  • 監督:市川準
  • 原作:村上春樹
  • 音楽:坂本龍一
  • 撮影:広川泰士
  • キャスト:イッセー尾形(トニー滝谷/滝谷省三郎)、宮沢りえ(A子:小沼英子)/B子:斉藤久子)、西島秀俊(語り)
  • オフィシャルサイト http://www.tonytakitani.com/
  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv34645/