2006年11月25日土曜日

恋愛回遊魚|起毛球了


妻がTSUTAYAで、中国語の勉強の教材に借りてきたので、何の気なしに一緒に見たんだけど思わぬ収穫(妻えらいです)

ストーリーは、台湾大学医学部卒の30歳の無職男と美少女の、都会(台北)を舞台にした、60分の恋愛もの。

その何が良かったかというと、まず、とにかく説明くさくない。見ている人にストーリーを追わせない。粋な セリフや小さなエピソードたちがとてもかわいいんですが、それを積み重ねてパズルがだんだんはまってラストに収束していく。

映像は、さすがに王家衛(ウォン・カーウァイ)の影響は感じられるけれど、随所に親日本カルチャーっぽい描写があるからかもしれないが、 彼よりもさらっとしていて、湿気があんまりない。

泣かせようとか感動させようとかがないのがかっこよい。最近だと、からからの乾いた薄いだけの絵になりがちな映画が多いけれど、16ミリフィルムを使ったざらつき感のせいもあったと思いますが、技術を意図的にちゃんと選択して使ったのでしょう。すごいリアル。送り手の商売的な意図がみえみえの映画とは対局だなーと感じました。だから良いと感じたんでしょう。

実は映画的にとても王道のちゃんとしたつくり。60分の中のシナリオと完成度はなかなかのものだと思いました。

キラキラしたハリウッド映画とかが好きな人にはオススメできませんが、屈折したインディーズ映画が好きな人だったら、見て損はない。

  • 2000年/台湾/60分
  • 監督、脚本:ウー・ミーセン
  • キャスト:チャン・ジャーホイ(ミャウミャウ)、ツァイ・ツェンリャン(ワン)
  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv32641/

2006年11月21日火曜日

コーヒー&シガレッツ


去年観た映画を、今頃、日記に書いているのもどうかと思うのだが、何で?というと、、、明日11月22日は、トム・ウェイツのすごい久しぶりの新譜が発売されるのだ。『オーファンズ』(EICP-736~8 税込6,300円:オリジナル・タイトル『Orphans:Brawlers, Bawlers & Bastards』)。で、そう考えていたら、彼も出演しているこの映画を思い出して、ついつい書いておきたくなったというわけだ。

『コーヒー&シガレッツ』。

これはジム・ジャームッシュお得意の、11編からなる短編オムニバス映画だ。話の舞台は主に?カフェ(カフェっぽくないところもあったかもしれないが)。出演者たちが会話するテーブルにはコーヒーと煙草が置かれている。モノクロームの映像は対話する出演者の心模様によって明るかったり暗かったり重くなったり暗くなったり。モノクロームなのに凄い多彩だ、出演者は多彩と言うよりみんな濃い。

11編の物語ってほどのストーリーはなく、ダラダラと気まずい雰囲気が流れたりする中コーヒーを前に流れてゆく時間。気まずさをコーヒーやタバコが中和しているみたいだ。そのけだるさが何とも心地良いのが変。

そんな彼らの心情を上げたり落としたりするのに、たぶんさりげなく拍車をかけていたのが音楽だ。元々ジム・ジャームッシュという監督は、音楽の使い方が独特だが、かなり一貫しているというか頑固一徹だ、彼は。彼の選択眼にかなった曲がかかり、私はそれにかなり同期してしまっているのでそれに違和感がまるでない。ブルース、R&B、オルタナティブ、レゲエなど、様々なジャンルの音楽が使われているけれど、まあ、ファンの宿命なのでしょう。彼の意図を推し量ることはあっても、彼のセンスをあまり疑おうとしない。まーそれでよいのです。

とりわけ、私の場合、トム・ウェイツだ。何せ、ジム・ジャームッシュより年季が入っている。かれこれ20年来である。それがジム・ジャームッシュの映画で曲が使われ、何度も俳優として出演し、ますます相乗効果?でお気に入りになっていった人たち。他の出演者たちも、ぞろぞろと芋蔓式にファンになってしまっていいる。だから、、、もう今日ですね。CD発売なのです、なんと3枚組。ワクワクです。

話を映画に戻しますが、トム・ウエイツとイギー・ポップの一編は、お互い探りあうようにコーヒー飲んで、タバコを吸って。タバコを吸う口実をもっともらしく語るのがおかしかったです。掛け合い、間がカフェっぽいというか雰囲気見せて貰っているだけで、クスッとしてリラックスできる。それにしてもトム・ウエイツ、世界で一番タバコ似合うんじゃないですかね。しかし、それでも私はタバコは吸わない派ですが、吸っている絵は好きなのです。あとは「いとこ同士」、ビル・マーレイ出演の「幻覚」も楽しかった。

ということで、私的にはオススメ。当然DVDは買ってしまうくらい好きです。ファンだから甘くつけているんじゃない?、、、と思われるかも知れませんが、30歳40歳代で、渋好みの人だったら、、、たぶん、いい感じで観られるんじゃないかなと思いますよ。観終わったあとはコーヒー飲みすぎた感覚になったのを覚えてますが、それでもコーヒー飲みたくなりました。

あー今週末は、DVD見直しそう。

  • 出演:
    ロベルト・ベニーニ 「変な出会い」
    スティーヴン・ライト 「変な出会い」
    ジョイ・リー 「双子」
    サンキ・リー 「双子」
    スティーヴ・ブシェミ 「双子」
    イギー・ポップ 「カリフォルニアのどこかで」
    トム・ウェイツ 「カリフォルニアのどこかで」
    ジョー・リガーノ 「それは命取り」
    ヴィニー・ヴェラ 「それは命取り」
    ヴィニー・ヴェラ・Jr 「それは命取り」
    ルネ・フレンチ 「ルネ」
    E・J・ロドリゲス 「ルネ」
    アレックス・デスカス 「問題なし」
    イザック・ド・バンコレ 「問題なし」
    ケイト・ブランシェット 「いとこ同士」
    メグ・ホワイト 「ジャック、メグにテスラコイルを見せる」
    ジャック・ホワイト 「ジャック、メグにテスラコイルを見せる」
    アルフレッド・モリナ 「いとこ同士?」
    スティーヴ・クーガン 「いとこ同士?」
    GZA 「幻覚」
    RZA 「幻覚」
    ビル・マーレイ 「幻覚」
    ビル・ライス 「シャンパン」
    テイラー・ミード 「シャンパン」

2006年11月17日金曜日

Touch the Sound|タッチ・ザ・サウンド


パーカッショニストのエヴリン・グレニーは、ギタリストのフレッド・フリスと共に、新しいCDの録音でドイツのケルンにある廃墟となった大きな工場跡にやってくる。彼女は聴覚障害があり、音が聞こえにくい。体のあらゆる感覚を通して音を感じている。むしろ聞こえないからこそ、音そのものをすごく大切にする。ニューヨーク、日本、カリフォルニア、イングランド、スコットランド・・・と、私はエヴリンと一緒に、日常に潜む“音”を体験していく。街や空港や石庭や海岸でエヴリンがみつけた音、街にあふれる音をバックに、何人ものアーティストとのセッションをしていく。そんな旅に同行していく感覚を共有していたら、だんだん自分の錆び付いた聴覚が戻ってくるみたいな感覚に襲われてきた。見えなかった音が、聞こえてくる。そんな気持ちの良いリハビリのような時間。

映画館を出て、やっぱり、自分の感覚がちょっと変わっていることに驚いた。センサーのコントローラーが目覚めて解放されて動き出したみたい。軽くなったような、新鮮な感覚にびっくりした。おれってば、スイッチをオンにすれば、ちゃんと聞こえるじゃないか!

しかし、、、映画館の外、渋谷の街をしばらく歩くと、その情報の内容、見るもの聴くもの、意識的に生み出されているノイズがあまりにも多くて、限界。もうひどい。雑踏、ノイズ、非人間的な刺激音。人が穏やかに平常心で生活することを許さない、無数の、無視できない音、音、音… 映画の中でも対比として挿入されていた外国の都会の音風景よりも、悪い意味でひどいリアルな渋谷だった。

最近、ノイズキャンセリングヘッドフォンが、けっこう売れてきているようだが

それって外の騒音を遮断するってことだから、都会の環境の改善じゃなく、単に自分の外殻の強化で、冷静に考えると、あんまりうれしいことじゃない。

世の中には、「サウンドスケープ」という研究分野があるそうです。とても興味深いですね。どっちかっていうと、ヘッドフォンよりこっちの方が、がんばって欲しいですね。



2006年11月15日水曜日

靴に恋する人魚|人魚朶朶


細部まで丁寧に作られた、小品佳作でした。多くの女性にはたぶん好評だと思いますが、男性でも、特に絵を見る描くのが好きな人、デザイナーとかイラストレーターだったら気に入る映画なんじゃないかな、と思いました。

行く前は、半分妻の付き添い気分だったんですが、良い方に期待を裏切られました。よかったです。

事前にネットで口コミを見て回ったところでは、女性の「ヴィヴィアン超かわいい!」というコメントばかりが目立っていたので、メルヘンチックな絵本の世界の可能性が大だと思ったのですが、香港の人気スター劉徳華(アンディ・ラウ)がプロデュースしていたり、公式サイトの世界がちょっと気になったり、掲載されているストーリーの「やがてドドとスマイリーは結婚して、幸せな暮らしを始めました。しかし、このお話はここからが本当の始まりです…。」という思わせぶりなところに、まーたまには、はめられてみても良いかーと思って、映画館まで足を運んだのでした。

実際見たら、想像以上に細かな作り込みされていて、世界観の作り方が、緻密。動く絵本の世界が、完成度高くこれでもかって登場する。

そのへんは「細部に魂が宿っている」モノに弱い私のツボに入ってしまいました。そして、シナリオ。やはり、ただのファンタジーではないし、アイドル映画でもない。上質の甘さに苦さも加えた、大人向けのファンタジーでした。

もしかしたら、味付けは全然違うけれど、テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル 』『フィッシャー・キング 』、リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』とかがお気に入りの人にも、良いのではないかな。

最後に、帰り際に思わず買ってしまったパンフレット、、、絵本でした。映画終わってから、だめ押しされちゃいました。仕掛けている人、こだわってましたねー


  • 監督:李芸嬋( ロビン・リー/LEE Yun-Chan )
  • 出演:ビビアン・スー(徐若�)、ダンカン・チョウ(Duncan/周群達)
  • 公式サイト http://www.ffcjp.com/kutsu/
  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv35555/

2006年11月8日水曜日

ブロークン・フラワーズ|BROKEN FLOWERS


ずいぶん前に観たんですけど記録しときます。

もう大学時代以来の長いジム・ジャームッシュファンなので、色眼鏡かかっちゃっているんですが、それなりに楽しめちゃう映画でした。同世代だったら、満足できる確率高いです。個人的には、前作のコーヒー&シガレッツもおすすめです。(こっちはDVD購入済み)

ただし、どんな人にもオススメかというとそうではなくて、ジム・ジャームッシュファンやビル・マーレーファンなら見ておかなくてはいけないし

そうじゃなくても、人生が枯れてきている人には味わい深い映画だと思います。一方、若い(って書いてしまうわたしは、、、)人の多くには、

ジムらしい、言いようのないおもしろい「間」とか、くすくすって笑えるところもたくさんあるんですが、そういうのは、たぶん退屈だろうなーと思いました。

2006年11月4日土曜日

父親たちの星条旗


この映画、硫黄島の戦いを題材にしてアメリカ側と日本側の目線で描き分けた2部作のアメリカ側編。なので、12月公開の日本編を見ないで何か個人的にも評価みたいなものを下すのはよくないなということで、積極的に保留です。ただ、2つほど気づき(宿題)があったので、一応記録。

一週間前に朝鮮戦争ネタの韓国映画「トンマッコルへようこそ」を見たのだけれど
  • 「トンマッコルにようこそ」で描いていた多くの個人
    →戦わない。守る。共有する、分け合う。草食的。農耕的。守るためには戦うことがある
    →かなり肯定的にとらえた私
  • 「父親たちの星条旗」で描いていたアメリカ(の体制と一部の個人)
    →戦って屈服させる。共有しないで独占する。富と貧困。肉食的。狩猟的。
    →肯定したくない。正直、ある程度の富とか生きる糧は欲しいけれど、略奪してまで欲しいとはどうしても思えない。
擬似的にしか戦争をあまりにも知らない私だし、日常生活でどちらもやっていることだから、聖人のようなきれい事は言えないけれども当分、頭の中で、永遠かもしれないけど宿題のひとつにします。

もうひとつですが、映画の内容は、現実世界とギャップが大きい方が、たくさん強めの発見・自分への宿題が出てくるので、見てためになるみたい。そんなこと今更気づいたの、、、って言われそうだけどね。


2006年10月29日日曜日

トンマッコルへようこそ


もちろん物語の詳細を書くつもりはないので概要は、公式サイト http://www.youkoso-movie.jp/ を見てもらえばよいとして、感想を率直に記録しておくと、、、

わたし的には、映画館で見ても損はない映画で、満足して映画館を出られました。普通ありえないファンタジーな設定だったし、これまで韓国映画にほとんど良い印象をもっていなくてこれが初映画館だったんで期待しすぎずに行ったのがよかったかもしれない、けど良い意味、裏切られました。少なくとも、これは良い。

村の中では、手榴弾がポップコーンの雨を降らせた。村の外の戦場では、銃弾が爆弾の雨を降らせた。少なくとも私にはちゃんとテーマを着地させてくれたと思うから。細かいディティールとかをつっつくと、いろいろ出てきますが、そういうのは、いいんです。この映画はそんなところにこだわって見る映画じゃなかった。

それでも、細かいとこいくつか記録しておくと
  • 対比とか比較のしかたがかなり計算されてたなー(戦争と平和、外と中、肉と草、攻撃と報復、、)
  • 俯瞰の視点がうまい。奥行きを出していた。良い意味で観客を冷静にもさせた。
  • ジブリ&黒澤明のオマージュっぽい演出はあったけれどそれはそれでよしと。

しかし、映画見終わって夜の繁華街を歩いてたら戦争とか生きるというものに対するリアルさが、自分もだけど、もう日本の戦後生まれだと持ってない、きっと。って実感してしまった。経済戦争はしてる?でもそれには命かかってないし。そんなんで、いいのかいけないのか、今答えはないけれど。