2006年11月17日金曜日

Touch the Sound|タッチ・ザ・サウンド


パーカッショニストのエヴリン・グレニーは、ギタリストのフレッド・フリスと共に、新しいCDの録音でドイツのケルンにある廃墟となった大きな工場跡にやってくる。彼女は聴覚障害があり、音が聞こえにくい。体のあらゆる感覚を通して音を感じている。むしろ聞こえないからこそ、音そのものをすごく大切にする。ニューヨーク、日本、カリフォルニア、イングランド、スコットランド・・・と、私はエヴリンと一緒に、日常に潜む“音”を体験していく。街や空港や石庭や海岸でエヴリンがみつけた音、街にあふれる音をバックに、何人ものアーティストとのセッションをしていく。そんな旅に同行していく感覚を共有していたら、だんだん自分の錆び付いた聴覚が戻ってくるみたいな感覚に襲われてきた。見えなかった音が、聞こえてくる。そんな気持ちの良いリハビリのような時間。

映画館を出て、やっぱり、自分の感覚がちょっと変わっていることに驚いた。センサーのコントローラーが目覚めて解放されて動き出したみたい。軽くなったような、新鮮な感覚にびっくりした。おれってば、スイッチをオンにすれば、ちゃんと聞こえるじゃないか!

しかし、、、映画館の外、渋谷の街をしばらく歩くと、その情報の内容、見るもの聴くもの、意識的に生み出されているノイズがあまりにも多くて、限界。もうひどい。雑踏、ノイズ、非人間的な刺激音。人が穏やかに平常心で生活することを許さない、無数の、無視できない音、音、音… 映画の中でも対比として挿入されていた外国の都会の音風景よりも、悪い意味でひどいリアルな渋谷だった。

最近、ノイズキャンセリングヘッドフォンが、けっこう売れてきているようだが

それって外の騒音を遮断するってことだから、都会の環境の改善じゃなく、単に自分の外殻の強化で、冷静に考えると、あんまりうれしいことじゃない。

世の中には、「サウンドスケープ」という研究分野があるそうです。とても興味深いですね。どっちかっていうと、ヘッドフォンよりこっちの方が、がんばって欲しいですね。