2008年1月29日火曜日

博士の愛した数式


昔感じたことがある、数字のおもしろさ数式の美しさを、ちょっと思い出した。

素数、階乗、完全数、虚数、、、知らなかったけど友愛数。

そういえば、高校の頃、数学の解答用紙で無駄のないシンプルな回答が導き出せて、文字もバランス良く、解答用紙の回答欄の中に調和して書ききったときに、美しい、と感じたことがあったような気がする。

いや、もっと昔、小学校の時。へたくそなバッティングしかできなかったボクが、何の拍子にか、気持ちよくバットが振れて、バットに気持ちよくボールがジャストミートして、軽く振り抜いたのに、ボールは気持ちよくスーッと綺麗な放物線を描いて飛んでいって、土のグラウンドでポーンッとバウンドした。そのときの気持ちよさがしっくり。もちろん非力だったからただのヒットだけど。それまで嫌いでしょうがなかった野球が、それを境に興味が出て、好きになったのかも。

以来、潔い、調和、清明、安心、素直、毅然・・・そんな無駄のないシンプルできれいなものに心を動かされるようになっていたかも。

それにしても記憶が80分しか持たなかったら、、、無駄なく自然にシンプルに、一日一日、そのときそのときを大切に生きるってことの大切さを考えさせてくれました。トラディショナルな演出で、刺激ではなく沁みてくる、なんか、心温まるって言葉が当たりの映画でした。黒澤組で28年たたき込まれた人が監督だってのが、やっぱりあるのかな。若いだけの監督には、これは作れない。


2008年1月26日土曜日

カンゾー先生


今日か明日は『人のセックスを笑うな』を観に行こうと思っていたが、ネット予約しようと思ったら売り切れだったので諦めた。さてどうしようかと思っていたら、都合よく今朝届いたので早速鑑賞。

麻生久美子のデビュー作にして新人賞とったというので、いつか観ておこうと思っていたが、近くのTSUTAYAにはおいてなかったので、TSUTAYA DISCASに予約して郵送されて来るのを気長に待つ作戦にしていて約一ヶ月。まさに、捨てる神あらば拾う神あり。

きっかけは麻生のデビュー当時の演技見たさだけだったのだが、なかなか収穫たくさん。

彼女の演技はさすがに10代、もちろん台詞は拙い。でも、20歳前にして物怖じせずに思い切り演じている。それが土台にあるから今の彼女があるんだなと、納得。これも女優の素質ですね。数多の監督に起用されまくっているのが分かる気がした。

で、他の収穫としては、実は今村昌平監督。たくさんのテーマを扱っていながら、すごく見事にまとめ上げていたこと。

  • 開業医・町医者
  • 戦争捕虜
  • 昭和20年という時代の空気
  • インバイ
これを機会に、伝統的な手法とかを知らず勢いだけはある若い映画監督の映画中心ではなく、巨匠も観るべきだなと思わせてくれた。

印象深かった言葉
 「開業医は足だ。片足折れなば片足にて走らん。両足折れなば手にて走らん。
 疲れても走れ。寝ても走れ。走りに走りて生涯を終らん。」

個人的に、医師と研究者は別、研究者医師には患者としてかかりたくないと思っているので、彼の姿勢にはとても共感。


  • 1998年/日本/129分
  • 監督:今村昌平  原作:坂口安吾  脚本:今村昌平、天願大介
  • 出演:柄本明(赤城風雨)、麻生久美子(万波ソノ子)、世良公則(鳥海)、松坂慶子、田口トモロヲ、唐十郎(梅本)、伊武雅刀
  • 受賞一覧 1998年
    キネマ旬報
     1998年 ベストテン 4位
     1998年 キネマ旬報賞 主演男優賞 柄本明
    報知映画賞
     最優秀主演男優賞 カンゾー先生 柄本明
     最優秀助演女優賞 カンゾー先生 麻生久美子
    日本アカデミー賞
     主演男優賞 柄本明
     助演男優賞 踊る大捜査線THEMOVIE いかりや長介 ※合掌
     助演女優賞 麻生久美子
     新人賞 麻生久美子
  • (ロケ地)岡山県牛窓http://www.360navi.com/photo/33okayama/02ushimado/01towen/10index.htm

2008年1月22日火曜日

『帰ってきた時効警察』 #1〜最終話 全9話


帰ってきた時効警察:2007年4月13日 - 2007年6月8日(全9回)
キャスト:オダギリジョー(霧山修一朗)、麻生久美子(三日月しずか)、豊原功補(十文字疾風)、光石研(諸沢)


  • 第一話
    嘘は真実を食べる怪物だと言っても過言では無いのだ!
    ゲスト:麻木久仁子、監督:三木聡
  • 第二話
    好きな理由よりも嫌いな理由の方がハッキリしていると言っても過言では無いのだ!
    ゲスト:市川実和子、監督:三木聡
  • 第三話
    えっ!? 真犯人は霧山くん!?
    ゲスト:杉本彩  監督:園子温
  • 第四話
    催眠術は、推理小説にはタブーだと言っても過言ではないのに…
    ゲスト:ともさかりえ  監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
  • 第五話
    幽霊を見ても決して目をそらしてはいけないのだ
    ゲスト:鶴田真由  監督:吉田玲子、麻生学
  • 第六話
    青春に時効があるか否かは熊本さん次第!
    ゲスト:西田尚美  監督:園子温
  • 第七話
    ごく普通の主婦がイノシシと間違えられるには、それなりの理由(わけ)があったのだ!
    ゲスト:国生さゆり  監督:山田あかね 安見悟朗
  • 第八話
    今回、三日月が大活躍する理由は深く探らない方がいいのだ!
    ゲスト:松田美由紀 加藤治子  監督:オダギリジョー
  • 最終回
    振り返らずに別れるか? 最後にもう一度振り返って別れるか? それが問題だと言っても過言ではないのだ!
    ゲスト:室井滋  監督:三木聡


オフィシャルサイト http://www.tv-asahi.co.jp/jikou/

2008年1月20日日曜日

五月の恋|五月之恋


主演のチェン・ボーリンは『藍色夏恋』で。もうひとりの主演リウ・イーフェイは武侠ドラマ『神雕侠侶 』で注目していたので観てみた。2人がネットで知り合って、でもお互いに嘘をついてて、台北で会う。

数日間のちょっと切ない恋物語か、、、と思って見始めたら、彼女は台北を離れて五月雪(桐の花が雪のように散るさま)を求めて三義に行く。彼女はなぜ三義にそれを見に行きたかったのか。台湾で亡くなった祖父の物語が語られていく。おじいさんの過去、1960年代の台湾と大陸の歴史もからんで、あーそうだったのかと急に深みが増していく。単なるアイドル映画で終わらせるつもりじゃなかったんだとわかって、ほっとした。

ただ、演出は全体的には緊張感に乏しい。もっとメリハリ欲しかった。あとからわかったことだけど、監督が『藍色夏恋』で製作だったんだ。なるほど、どこか似た感じがするのはチェン・ボーリン主演だからかと思っていたが、それだけではなかったわけだ。


  • 2004年/中国・台湾/110分
  • 監督:シュウ・シャオミン 徐小明
  • 出演:チェン・ボーリン 陳柏霖(アレイ)、リウ・イーフェイ 劉亦菲(シュアン)、メイデイ 五月天
  • ロケ地(三義)情報  http://www.c-c-club.net/travel/sanyi.htm


2008年1月19日土曜日

気球クラブ、その後


気球が大好きなクラブのリーダーは、好きな女と地上ではしっかり向き合えなくて、すぐ空に逃避?するような幼い男。まわりの男もそろいもそろって、さしたる目標もなく、それでも真剣に探すわけでもなく、危険のない漂流をするように学生時代を過ごす。軟派なボヘミアン男たち。女の方が男どもよりも現実と向き合っていて強い。昔の大学生って(今もか?)たしかにそんなところがあった。何だか全編、ちょっと苦い想い出のような映画だった。郷愁をそそられたけれど、あんまり、こういう大学生は肯定したくない。ますます日本が没落しそうだから。

「翳りゆく部屋」も、懐かしくはあるけれど、今の時代になってまであんまり浸っちゃよくない唄だな

でも、時効警察第4話コンビ(永作博美=園子温)は、個人的に応援したいパターン。

  • 2006年/日本/93分
  • 監督・脚本:園子温
  • 出演:深水元基 、 川村ゆきえ 、 長谷川朝晴 、 永作博美 、 いしだ壱成
  • 主題歌:翳りゆく部屋(歌:畠山美由紀 作詞作曲:荒井由美)
  • オフィシャルサイト http://kikyuclub.com/


2008年1月12日土曜日

『時効警察』 #1〜最終話 全9回


時効が成立した事件を“趣味で”捜査する総武署時効管理課の警察官・霧山修一朗の活躍を描くコメディーミステリー。

気楽におもしろい。今、オダギリジョーと麻生久美子に注目しているので、今さら旧作をまとめて見てるんだけど。2人ともゆるい演技が上手。オダギリジョーはかっこよい系より2.5枚目の方が印象的。シナリオは、犯人はたいていゲストだったり事件発生当時の容疑者だったりと、ほとんどわかってる状態なので、推理よりも、細かな心理描写・コメディ面に集中できるのがよいですね。

懐かしネタたくさんなのでそこそこ歳いった人が深く楽しめる。園子温なんて名前も見つけたし、懐かしいー。

で、また、彼の演出になる第4話『THEアネゴ探偵・寂水先生が行く!!』が最高。永作博美、最高。あと、第6話だけは時効前ネタ。「時効」についての哲学も入っていて、まじめにホロリとさせる。


初回放映:2006年1月13日 - 2006年3月10日(全9回)
キャスト:オダギリジョー(霧山修一朗)、麻生久美子(三日月しずか)、豊原功補(十文字疾風)、光石研(諸沢)

  • 第一話
    時効の事件には、おいしい御飯の湯気が似合うと言っても過言ではないのだ!
    ゲスト:東ちづる  監督:三木聡
  • 第二話
    偶然も極まれば必然となると言っても過言ではないのだ!
    ゲスト:池脇千鶴  監督:三木聡
  • 第三話
    百万人に無視されても一人振りむいてくれれば人はしあわせ…じゃない?
    ゲスト:緒川たまき  監督:岩松了
  • 第四話
    犯人の575は崖の上
    ゲスト:永作博美  監督:園子温
  • 第五話
    キッスで殺せ! 死の接吻は甘かったかも?
    ゲスト:奥菜恵  監督:高山直也 塚本連平
  • 第六話
    恋の時効は2月14日であるか否かはあなた次第
    ゲスト:森口瑤子  監督:園子温『時効警察』 #7,#8,#最終話
  • 第七話
    主婦が裸足になる理由をみんなで考えよう!
    ゲスト:葉月里緒菜  監督:岩松了 塚本連平
  • 第八話
    桜咲く合格通知は死への招待状?
    ゲスト:桜井淳子  監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(共同脚本:山田あかね)
  • 最終回
    さよならのメッセージは別れの言葉とは限らないと言っても過言ではないのだ!
    ゲスト:りょう  監督:三木聡




2008年1月11日金曜日

我愛你 |ウォ・アイ・ニー


張元監督。これがあって、次の「緑茶」があるわけか。なるほど。どっちも心理描写が細かいし、演技力を要求する監督だ。見る方としては奥深くて興味深いんだが、これはシーンが夫婦喧嘩、嫉妬、怒りなどが多いので、ちょっと精神的に疲れるかな。ぎりぎりの精神状態とか、普通の人と違う人を主人公にしているのも共通していた。この監督のマイブームなのか。

徐静蕾監督・主演の『見知らぬ女からの手紙(2004)』が1月25日にDVD発売予定。ようやく。




2008年1月10日木曜日

eiko【エイコ】


阿部サダヲ、こういう演技もできるんだ。存在感あるいい役者だ。
全体としては、麻生久美子をいっぱい見られればよいという人向けだな。

映画で見るの珍しい沢田研二も、普通のおじさんだし、残念。「太陽を盗んだ男」は格好良かったんだけど。


  • 2003年/日本/108分
  • 監督 : 加門幾生
  • 脚本 : 三澤慶子 、 加門幾生
  • 出演 : 麻生久美子 、 沢田研二 、 阿部サダヲ 、 袴田吉彦 、 大杉漣


2008年1月6日日曜日

ヤンヤン 夏の想い出


何となくタイトルが子供映画っぽいという理由で食わず嫌いにしていた。なので、当然、昨年(2007年)に監督が亡くなってその追悼特集が東京映画祭であったが未見。つまらない先入観のおかげで見ていなかったことを激しく後悔した。3時間なんて苦にならない良い作品。これだけの登場人物がいるのに、飽きさせず混乱させずに引っ張っていけている映画はそうお目にかかれない。絵も美しい。なにより、人生とか生き方を考えさせられる台詞が多く深い。何度も噛みしめる価値がある。気持ちが弱っているときに見たので、尚さらだったかも。

他の作品も掘り起こして見たい。・・・しかし邦題のセンス悪すぎ(逆ギレ)

相変わらず、イッセー尾形はイイ味出してる。



2008年1月5日土曜日

容疑者 室井慎次


登場人物が多くて、ちょい役が多くて、幕の内弁当を食べた感じ。最初から深さは狙ってないか。

そんな中、八嶋智人の悪役怪演がせめてもの収穫。

  • 2005年/日本/117分
  • 監督:君塚良一
  • 製作:亀山千広
  • キャスト:柳葉敏郎(室井慎次)、田中麗奈(小原久美子)、哀川翔(工藤敬一)、八嶋智人(灰島秀樹)、筧利夫(新城賢太郎)、真矢みき(沖田仁美)、柄本明(津田誠吾)、吹越満(篠田真一)、佐野史郎(窪園行雄)


交渉人 真下正義


宣伝量はものすごい割に、映画そのもののの質は・・・予算の配分が健全ではない気がする。


  • 2005年/日本/128分
  • 監督:本広克行
  • 製作:亀山千広
  • キャスト:ユースケ・サンタマリア(真下正義)、寺島進(木島丈一郎)、小泉孝太郎(小池茂)、國村隼(片岡文彦)、水野美紀(柏木雪乃)


2008年1月4日金曜日

最後の恋,初めての恋


なかなかいいキャスト揃えたし、俳優たちの演技はよかったと思う。特に徐静蕾。でも、全体としては薄味なので軽く見るならいいけれど、早送りでとばしたくなるんですね、時々。そこが限界。ミンなのかリンなのか早瀬なのか、もっと人の魅力を掘り下げて描写してくれるとよかったのに。二兎を追う物は一兎をも得ずかな。中国の公開ではさらに25分もカットされてしまっていたとか。さらに浅く散漫になってしまったかと思うと残念。むしろ連続物のテレビドラマになってた方が良かったかも。。どうもたくさんの利害関係者がいて、それぞれの思惑のパッチワーク、マーケティング優先という印象。


  • 2003年/日本・中国/118分
  • 監督: 当摩寿史
  • キャスト:渡部篤郎(早瀬高志)、徐静蕾 シュー・ジンレイ Xu Jinglei(ファン・ミン)、董潔 ドン・ジェ Dong Jie(ファン・リン)、陳柏霖 チェン・ボーリン Chen Bo-lin(ピート)、牛犇 ニィウ・ベン Niu Niu(ファン・シャンフー)、津田寛治(森口直之)、筧利夫(澤井和彦)、石橋凌(恩田聡)
  • 徐静蕾,董潔interview #2003東京国際映画祭来日時
  • http://allabout.co.jp/entertainment/movie/closeup/CU20031203F/index2.html


2008年1月3日木曜日

踊る大捜査線 THE MOVIE2  レインボーブリッジを封鎖せよ!


初めて見たときには、わくわくどきどきしながら観たもんだが、何度観ても良い、という種類の映画ではなかったな。


  • 2003年/日本/138分
  • 監督: 本広克行
  • 出演: 織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、いかりや長介、小野武彦、斉藤暁、北村総一朗、高杉亘、神山繁、小泉孝太郎、小西真奈美、真矢みき、筧利夫、岡村隆史


踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!



  • 1998年/日本/119分
  • 監督: 本広克行
  • 出演: 織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、いかりや長介


2008年1月2日水曜日

影武者


戦国時代の家紋のデザインは世界に誇れる優れたマークデザインだと思っていた。しかし、あらためて「風林火山」を見て、これが最高。組織の哲学がダイレクトに4文字で表され、現代の、企業の行動規範、企業風土を言語化したものになっていて、そんなものは他にない。敵に向けてのメッセージとして強く機能したのは当然だが、インナーブランディングにもなっている。戦国時代で一番アバンギャルドだった。

これが、跡継ぎである勝頼には全然理解されていなかったのは悲劇としかいいようがない。本来の意図は、リーダーが代わっても哲学が浸透していれば、組織のアイデンティティも引き継がれて、競争優位性も簡単には失われないはずだったのだろう。しかし肝心の一番引き継がなければならないリーダーが何も引き継いでいなかったから、家督を継いだ瞬間にあれほど強かった武田家が哲学なき烏合の衆になり、あっというまに滅んでしまう。

苦労して作り上げても、滅ぶ時はあっという間。しかも滅ぼし方も美しい。

  • 1980年/日本/179分
  • 監督:黒澤明
  • 出演:仲代達矢(武田信玄、影武者)、山崎努(武田信廉)、萩原健一(武田勝頼)、隆大介(織田信長)
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv18924/