2008年5月31日土曜日

夜のピクニック


高校生活の思い出作りになるイベントというと、部活、体育会系だったら大会、体育祭。文科系なら文化祭。あとは全校行事。非日常イベントは、何かが起こる。非日常の場を提供するだけで、そこに参加する人たちは、否応なくそれぞれが何か普通じゃないことをやりはじめるもんでした。この映画では80キロをただ歩く「歩行祭」。

イベントとしては歩き通すだけなんだけど、だんだんみんな無駄なことやる元気がなくなって、普通じゃなくなっていって、本音がむき出しになって、素直じゃないところが削られて。ぎりぎりな状態になると、自分を飾るとか隠すとかやってる場合じゃなくなって、素のコミュニケーションしかしなくなる。だから、それまで、ひとことも言葉が交わせなかったクラスメートの二人が、最後には話しができてしまうのも、非日常が、日常の変なわだかまりを無駄な物としてくれちゃったからなのかと。昔を思い出してちょっと納得。そう変わっていく様子を、最初から最後までつぶさに追っていくのは、見ている方としては、観察者的だけど、興味深かった。

  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv35683/
  • 2006年/日本/117分
  • あらすじ - goo 映画
  • 監督:長澤雅彦
  • 出演:多部未華子 / 石田卓也 / 郭智博 / 西原亜希 / 貫地谷しほり / 加藤ローサ / 嶋田久作 / 南果歩
  • ロケ地:水戸市ほか

2008年5月23日金曜日

100%の女の子


1983年?84年?、大学生時代、「ぴあフィルムフェスティバル'84」で見た映画。ふとネットで、いつのまにやらDVDになっていることを知って即購入した。

村上春樹の「カンガルー日和」の中にある短編小説の映画化だ。まだまだ若かりし頃の室井滋が主演していて、当時彼女は自主映画の女王と呼ばれて、たくさんの自主映画に出演していた。

しかし、そんなことはみんな後から知ったことで、その時は当時の自分が持っていたものさしには収まらなかったがゆえに、たぶん、大学生時代に一番記憶に残った自主映画になったのだ。スチール一枚一枚に色を付けるという、Andy Warhol的にも思える表現をこつこつ映画でやることにびっくりし、また全編通したリズム感は、他に似たものを知らなかった。佐野元春のエンディングソングもあまりにかっこよくはまっていて、帰り道に収録されているアルバム「Heart Beat」を即買いした。当時は貧乏学生であまり金は持ってないので、即買いは決意が必要だった。

あらためて見ると、あのときの衝撃の大きさは減っていて、あれ、こんなもんだったけな?と、20年の間に、ずいぶん世の中も自分も、先に進んだんだなーということを、激しく実感した。

でも、表現が思ったほど古く感じなかったなかったのでほっとした。確かに、今、こういう表現を作ろうと思ったら、やっぱりこつこつ手作りするしかない。古くなってないって凄い。

  • 1983年/日本/11分 16mm
  • 監督:山川直人
  • キャスト:室井滋、ほか
  • 原作:村上春樹「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」(「カンガルー日和」所収)
  • Ending Song:佐野元春「君を探している」歌詞(佐野元春official site)

2008年5月19日月曜日

アイデン&ティティ


これは好き。もう40も過ぎて見ると、青臭いって思うけど。でも逆に今だからそういう青臭さ、ロック、「やらなきゃいけないことを、やるだけさ。だからうまくいくんだよ」なんてメッセージが眩しい。クドカンだし、キャストの演技もさすがにいい。

節目節目に挿入されるディランの詩が効いていて、殴られっぱなし。ボブ・ディランの唄が使われる映画はよくあるけど、個人的にはこれが過去いちばん。

それにしても、無いものを欲しがるし、無くしてから取り戻したくなるものだねえ。
  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv32622/
  • 2003年/日本/118分
  • あらすじ - goo 映画
  • 監督:田口トモロヲ
  • 原作:みうらじゅん
  • 脚色:宮藤官九郎
  • キャスト:峯田和伸 ミネダカズノブ(中島) / 麻生久美子 アソウクミコ(彼女) / 中村獅童 ナカムラシドウ(ジョニー) / 大森南朋 オオモリナオ(トシ) / マギー マギー(豆蔵) / 岸部四郎 キシベシロウ(事務所社長) / 浅野忠信 / 三上寛 / あき竹城 / 大杉漣 / ピエール瀧
  • Ending Song : Like A Rolling Stone(Bob Dylan) Wikipedia

2008年5月18日日曜日

太陽


ポツダム宣言受諾から人間宣言、マッカーサーとの対面まで、昭和天皇の孤独と苦悩を描く、という意図のようだが、見て感じたのは複雑。戦犯としては見られないし、自分の遠いルーツとして思うと笑えないし、単純にかわいそうとも思えない。見ていて笑っていいのか笑ってはいけないのか、また笑ったら日本人である自分のことも笑うことになってしまわないか、など、いちいち戸惑う。

しかし全体としては、単純な外国人には滑稽に見ていたかもしれない天皇の姿も、彩度を落として、緊張感のあるBGM、ゆっくりした画面展開で、品位を保つことによって、喜劇役者とは全く違うのだという答えにはなっていたと思う。イッセイ尾形の演技も、ものまねとしてではなくリアリティとしてレベルの高い演技だった。思い起こすと初めて彼を見たのは、もう20年以上も前の新宿紀伊国屋ホール「都市生活カタログ」。そのころすでに得意技だった観察力と表現力をここまで昇華させてきたのは、凄いとしかいいようがない。「ヤンヤン 夏の想い出(台湾)」もよいし「トニー滝谷」も。彼には外れがない。


  • 2005年/ロシア・伊・仏・スイス/115分
  • 監督:アレクサンドル・ソクーロフ
  • 出演:イッセー尾形 / ロバート・ドーソン / 佐野史郎 / 桃井かおり / 田村泰二郎
  • イッセイ尾形オフィシャルサイト http://www.issey-ogata.net/
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv35627/

2008年5月17日土曜日

風の前奏曲


19世紀から20世紀に生きた実在のラナート奏者の成長物語。他の奏者との演奏バトルもあり、幸せな音色、荒い音色など、いろいろなラナートの音色が堪能できて、耳に心地よかった。木琴の音色って温かかったなー。19世紀のタイの宮廷文化や人の振る舞い、民度の高さ深みにとても親近感を持った。日本と似ているかも。

侵略国が言語を支配するのと同時に文化も支配するのはよくあることだけれど、タイの1930年代の戦時下に、独立を保つために日本に学んだ近代化政策のひとつとして、自国民が伝統を潰そうとしたなんて、ほんと危なかったんだな。今残っていて良かった。

タイでは大ヒットしたらしいが、グローバル化経済危機などで、タイ人の心のよりどころの危機があった時期に、これがタイの伝統やアイデンティティの確認になったんだとか。

タイ、もう5年くらい行ってない。また行きたいー。


  • 2004年/タイ/105分
  • 監督: イッティスーントーン・ウィチャイラック
  • 出演: アヌチット・サパンポン / アドゥン・ドゥンヤラット / アラティー・タンマハープラーン / ナロンリット・トーサガー / ポンパット・ワチラバンジョン / プワリット・プンプアン
  • 作品情報 http://movie.walkerplus.com/mv34576/

2008年5月6日火曜日

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ


もやもやしていた気分をすっきりしたいときに見たんだけど、、、
意地悪、自分中心、勘違い、いじめ、暴力。ブラックというかダークな方向の人間部分を刺激されてしまって、逆効果。

しかし、永作博美はサイコー。痛々しい役も、のびのびした役も。サトエリは素でやっていて限界を感じてしまうが、彼女は役を自分で作っている。まだまだ大きくなる。


  • 2007年/日本/112分
  • 監督・脚本:吉田大八
  • 原作:本谷有希子
  • 出演:佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏
  • 主題歌:チャットモンチー「世界が終わる夜に」
  • オフィシャルサイト http://www.funuke.com/

2008年5月5日月曜日

花様年華


先月、ウォン・カーウァイの『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を見て期待をはずしてしまったので、こんなはずはない!と、遡って見た。

1960年代の香港が舞台。チャウ(トニー・レオン)とチャン(マギー・チャン)が、お互いの相手が不倫していることを知って気持ちが揺らぎ、今度は不倫されている2人が惹かれ合って行く。2人のうまさはもちろん、狭い階段、光と陰、雨を効果的に使った画面構成が、緊張感があって美しい。

それにしても、チャウの小説を書くために借りた部屋の番号が『2046』。しこんで遊んでるな。

食事のシーンが多くて、おいしそうに食べるもんだから、無性に鼎泰豊の小龍包が食べたくなった。


  • 2000年/香港/98分
  • 監督,脚本:Wong Ka wai 王家衛 ウォン・カーウァイ
  • 撮影:Christopher Doyle 杜可風 クリストファー・ドイル 、Lee Ping bin 李屏賓 リー・ピンビン
  • 音楽:Micheal Galasso マイケル・ガラッソ
  • 出演:Tony Leung 梁朝偉 トニー・レオン (Chow) 、Maggie Cheung 張曼玉 マギー・チャン (Mrs. Chan) 、Rebecca Pan 藩迪華 レベッカ・パン (Mrs. Suen) 、Lai Chen 雷震 ライ・チン (Mr.Ho)


2008年5月4日日曜日

花蓮の夏|盛夏光年|ETERNAL SUMMER


すごい痛々しい、けど(だから)美しい。

監督は若さ純粋さを失う前に映画にしたかったらしい。確かにそうだろう。世間の不純物を体に取り込んでしまったら、もう撮れない。映像にできてよかったと思う。

この映画から感じることができる自分はまだいるけれど、ずいぶん遠くにきてしまった気がする。かなり距離を感じるけれど、わからないではなく、距離を感じるだけだから、まだまだ若いかな。



  • 2006年/台湾/95分
  • 原題:盛夏光年 ETERNAL SUMMER
  • 出演:ブライアン・チャン、ジョセフ・チャン、ケイト・ヤン
  • 監督:レスト・チェン Leste CHEN 陳正道   
  • 製作:Leste CHEN 陳正道、Patrick Mao Huang 黄茂昌
  • 脚本:Cheng Ping Hsu 許正平
  • 撮影監督:Charlie LAM 林志堅
  • 主題歌:アシン(阿信)from Mayday(五月天)『盛夏光年』(ロックレコード)
  • オフィシャルサイト http://www.karen-natsu.com/
  • 花蓮旅日誌 http://www.hl-net.com.tw/blog/index.php?pl=71 ※ロケ地情報など