2008年8月24日日曜日

練習曲|Island Etude


まねして、台湾一周自転車の旅がしたくなる

シネマート六本木で視聴。台湾シネマコレクションのサイトで予告編を見ていて、これは見ておきたいと思ったものなので、期待持って行こうと思っていたのに、時間管理がゆるくてぎりぎりに駆け込むはめになってしまい、連れにはごめんなさい。

大学卒業を前にした耳が不自由な青年ミンが、ギターをかかえて台湾一周の旅に出る。高雄から反時計回りに自転車での旅(映画では台東あたりから始まる)。旅の途中で出会う、映画撮影クルー、リトアニア人女性旅行者、祖父母との再会、逆回りで自転車で旅をする人、リストラ、旧日本の発電所跡の再開発に議論する人々、、、。「台湾を一周することは、人生そのものを旅することに似ているということを表現したかった」と監督のコメントがあったが、なるほどと思ったり、それはちょっと陳腐なテーマだなとも思ったり。強いメッセージを押しつけることなく、自然な演出で、道すがら紡がれるエピソードはどれもドラマチックすぎることはない。社会の中では平凡か弱い側にいる人たち。キャストにもスターはいない。過剰な演技もない。だから、ふだん味わえない刺激ではなく、自分に当てはめてしんみりと感じさせられた。ちょっと離れた日本の中の物語を見ているようで、不思議な親近感。

結局、主人公の彼は主人公ではなく、現代台湾の語り部というか、あまり語れないので、静かなナビゲーターでした。耳が不自由だから各地の物語に積極介入できないが、それがむしろよかったかも。これを見て台湾一周をする人が増えたというが、気持ちはよく分かる。自分のルーツや自分の国を見直す貴重な時間は、こうして日常から離れた旅でないと確認できないなと思うが、そのきっかけもくれる映画。


  • 詳細 http://movie.walkerplus.com/mv37385/
  • 2007/台湾/108分
  • 監督 脚本 撮影:陳懐恩(チェン・ホァイェン)※『悲情城市』(撮影)
  • 出演:東明相(イーストン・ドン)、張惠春(Saya) 、達倫(K-One)
  • 2007年台湾映画興収第1位
  • シネマート六本木 台湾シネマ・コレクション2008にて