2009年10月11日日曜日

おと・な・り


アパートの薄い壁は、隣のうちの音が聞こえてしまって、良いことはないものだと思っていたが、この話だととてもポジティブ。七緒(麻生久美子)はフラワーデザイナーの資格をとってフランス留学目指している、頑張りすぎている30歳。聡(岡田准一)はカリスマモデルの友だちシンゴのおかげで写真家として売れているが撮りたい風景写真が撮れずに悩んでいる30歳。そんな同じ時期に無理をしている2人を隔てている壁越しに聞こえてくる音は、ふたりをつかの間癒す。コーヒーを挽く音、フランス語の発音の練習の声、花を切る音、そして七緒も聡も口ずさむ、はっぴーえんどの『風を集めて』・・・。お互いが発する音や気配で癒され欠かせない存在になっていく。裏切られて押し殺して泣く七緒の声、聞いているよと言うことを知らせる壁をこつこつ叩く音。しかし次の日、彼女は引っ越して行ってしまう。

現実には、ありえないできすぎのシチュエーションだらけだが、ファンタジーだと思って割り切ってしまえば、よい。はらはらさせるが、悲劇は待っていなかった。

麻生久美子はいつものように期待通りでよかったし、それに加えて、シンゴの恋人役の谷村美月のはじけっぷりが見事。これから気にしたい女優が一人増えたのも収穫。