2009年3月14日土曜日

トキワ荘の青春


若い頃の石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄ら、多くのマンガ家たちが青春時代を過ごしたアパート“トキワ荘”。成功していく人、成功できずに去っていく人の、細かな心の機微を丁寧に追っている。主人公である寺田ノブオ氏は若い漫画たちの先輩であり彼らの兄貴的な存在で頼られていくが、同時に彼らの才能や、彼らが売れていくのと自分を比べざるを得ず、また自分が書きたい世界が、発行部数が出なければ生きていけない漫画雑誌に受け入れられなくなっていくことに必死に抵抗するが・・・。

市川監督の映画の多くはそうなのだが、過剰と思われる演出がなく、すごくドキュメンタリーっぽい。古いアパートだし大きな物音を出してよい住環境ではないが、それでも、みんなぼそぼそとしゃべる。日常生活で大声で叫んだりすることはかなり少ないように、喜怒哀楽はとても自然だ。音楽も過剰に流れない。セットなのにセットっぽく見えないように撮っている。照明も自然。廊下は暗く表情もよくみえないがそれで良いのだ。小津度75%。